未曾有の群雄割拠 あれから30年ほどになるか
劉備―― 劉玄徳よ
生き残っておるのは
無名からはい上がってきた おまえひとりだ
蒼天航路の最終章は、この曹操の独白から始まりました。この次のページの曹操と劉備が対峙する見開きに、雑誌掲載時には「最終章突入」と書かれていました。(ちなみに今改めて流れを見返すに、ここからラストまでのシークエンスがまとめて、やはり「最終章」だったのだと納得できます)
舞台は漢中戦。ここで、曹操の幼い頃からの腹心・夏侯淵の戦死を経て、vol.2で触れたように曹操の漢中撤退、劉備の漢中王宣言、それに呼応した都や各地の反曹勢力の蜂起と言う流れが続きます。そしてこの全土の反曹のうねりに時をあわせて遂に、天下無双の武将・関羽が動きます。曹操最大のピンチです。
曹操はつぶやきます。
「食えぬ鶏の肋 漢中
漢中王の虚名
関羽の発する侠の武
理からこぼれたものをかき集めて呼応させようというのか
理の外!
まるで曹操の棲まぬ世界で天下を動かそうとしておるようではないか!」
考えて見ればこの「蒼天航路」と言う作品において、曹操は常に歴史を動かしてきました。数々の戦でも無敵の強さでした。(それこそ読者に「曹操完璧超人すぎ(w」と揶揄されるくらい(笑)。) それがこの前後。儒者には上へ上へと押し上げられ、孫権には降伏され、劉備には篭られ、そして関羽の城攻めには立ち会えず…。
つまり、戦ったら無敵の曹操は、「戦わせてもらえなくなった」。
老いてなお「俺は死ぬまで戦場を駆け回るのだ」「志は千里に在り 壮心止まず」と言い続けていた曹操にとって、それが一番ダメージを与える攻撃法だったのかもしれません。孫権は、曹操との最後の戦のあと、こう言って降伏文書を送りつけました。
「攻撃じゃ! 狙うは孟徳ただひとり」
そしてその降伏文書を受け取った曹操も、憤怒の表情でこう言います。
「曹操に処する手口を掴んだつもりか ど童め!」
前回、vol.2で僕は「(曹操の最期は)天下の3分の2を統一しつつの畳の上での死、しかも死の直前の最後の二つの出兵は、大勝でも大敗でもない、「引き分け撤退」という地味さです。」と書きました。これはまさに、「戦わせてもらえなかった結果」と言う事なのかもしれません。
関羽の快進撃、救援に赴いた魏軍七軍の全滅の報を聞き、曹操は吐露します。
「尋常ならぬ悪天 桁はずれの関羽 なぜ俺がそこにおらん」
うわあああ、魏国最大のピンチだと言うのに、その事も意に介さず、ただこの戦いへの渇望! そして人材への渇望!!! もうししし痺れるぜ魏王ぉぉぉっ!!!
が、その渇望とは裏腹に、ほどなく倒れる曹操。 魏王、不予!!
……
この中華全土の反曹の蜂起、そして関羽の大進撃と言う曹操・魏国最大のピンチは、曹操が昏睡している間に、曹操が見出し育て上げた徐晃・曹仁や次世代の英雄たる曹丕・司馬懿・陸遜、そして孫権らによって決着がつけられてしまいます。
蒼天航路・最後のクライマックス。この最後の最後に曹操の見せ場が無いのは寂しかったし、「??」とも思いました。ですが、考えて見ればこれこそが、常に世界を動かしてきた曹操が死に向いつつあること、世界は曹操がいなくなっても回りつづける事を表し、そしてまさにそれこそが曹操の人生を描いた「蒼天航路」と言う作品の終焉としてふさわしい描写と納得しました。
そして。
かつて「人はいずれ死ぬ」と言った関羽も、その武を全うして討たれました。(その最後がまた美しいんだ、これが!!! ・゚・(ノД`)・゚・。)
ずし…ずし…と、もう歩くのもやっとなほど衰えた曹操は、孫権から送られてきた関羽の首を愛でて(髯を愛でて?(笑))こう言いました。
「うらやましいぞ 関羽」
もうね、この辺であれですよ、読んでて感極まってきちゃいましたよ(笑)。最終話の幻想シーンにあったように、曹操は本当に最後の最後まで戦いたかったんだなーと。戦場での死を望んでいたんだなーと。その後のセリフがまた寂しい。
(関羽はおのれの肉体を全うして死んだ)
(俺はもう 馬にも乗れん)
あああああなんて寂しい事言うんだ曹操!!
そして最終回。曹操の死。
「あたたかだな 惇」
夏侯惇の傍らで、静かに逝く曹操。奇麗な終わり方でした。葬儀の様子やその後の歴史に簡単に触れたあと、曹操は天に昇っていきました。この最後4ページにはやられましたよ。このラストシーンで、改めてこの物語は曹操の物語だったと再確認。
ならばよし
水晶を探しにいくか
この蒼き天の向こうへ
天に昇って青年時代の顔に戻った曹操。もうこのラストシーンですべてがスッキリしちゃった気がします。以前は劉備のその後とか外伝描いてほしーなーなんて思ってたものですが、あまりに奇麗に終わったんで、それももういいやってくらいの気分になってます。関羽の死と最終回の劉備陣営のひとコマで、その辺全てを表しきってる気がしますしね。
最後に、曹操を幼少の頃から見守ってきた(?)故郷の長老亀のセリフで蒼天航路最終回特集を締めたいと思います。
逝ったか 孟徳
関羽は神になり
劉備は物語となる
しかし孟徳よ
おぬしは乱世の奸雄のままだが 人の世は曹孟徳を残す
百年たとうが 千年たとうが
おぬしを忘れ去ることはない
曹操、お疲れ様でした。 関羽、お疲れ様でした。
そしてGONTA先生、お疲れ様でした。
近いうち横浜中華街の関帝廟に行って関さんのお参りでもしてくっかなー。
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