絵って奥深い
「あずまんが大王」「よつばと!」のあずまきよひこ先生が、以前何かのインタビューで「僕はストーリーの力は信じていないところがあるんですが、絵の力は信じてるんですよ」みたいな趣旨の事をおっしゃっていた。
あずま先生のファンではあるものの、僕自身は普段はわりと小説寄りの、ストーリーの展開や活字から得る情報量を楽しみにするタイプの読者なので、それを読んだとき「ああ、僕とは違うタイプの方なんだな」と思った。が、それでもこの言葉は印象に残っていた。あずま先生の作品を読んでいると、その言葉になんと説得力のある事か。あずま先生の作品の良さは、まさしく絵の持つ表現力。そこからかもし出される雰囲気。何事も起こっていないのに、なんでこんなに面白く感じるんだろう。
漫画を描く場合、絵の力が上がれば上がるほど、ひとコマで読者に与えられる情報量は絶大になっていく。セリフやナレーションで何十字も費やす事よりも、ひとコマの中のちょっとした手のしぐさを凝ってみるだけで、あるいはちょっとした小物、空間にまで気を使って作画するだけで、読者に伝えられる情報量は倍加する。それも読者に長文を読む労力を費やさせずにだ。いや、それが難しいんだけどもさ。
最近まで自分は、そういう部分に関してあまりにも軽視してたかな、とちょっと思う。自分自身が受け手としては映像よりも活字から情報を受け取る方が楽な人間であり、漫画家としては絵師であるよりもストーリーテラーでありたいと言うタイプの人間であるためだろう。(絵がそんなに上手くないことは自覚していたが、それを自分ではそんなに深刻な問題とも思っていなかったのです)
が、漫画はあくまで「絵で表されるエンターテイメントだ」と言うことを自分自身に改めて銘記しておかなければならないかもしれない。絵で表現できる幅が広がれば、同じページ数でも表現できる話の幅がぜんぜん違うことを、日に日に実感してるからです。(とは言え絵がめちゃくちゃ上手くても漫画として面白いかどうかは別の話で、この辺に関しては基本的には「メジャー誌の漫画制作の作法」がまったく正しいと思っていますが)
今回の仕事は、SFに関してその辺を吸収するいい機会だと思う。なかなかキツイ仕事なのであまり余裕はありませんが、せっかくだからこの仕事を終えた時一皮向けてるように、一話一話できるだけ工夫してみようと思います。
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コメント
なんか身につまされる話ですな。
がんばろう。
投稿: ふじき | 2006年5月18日 (木) 20時24分
ネーム描く時の意識ですでに「絵で表すんだ」との自覚が足りんかったなって思いました。字まみれの「デスノート」だって、小畑先生の凄まじい絵の説得力とのコラボがあるから成り立っているわけで・・・
投稿: TAK@森田 | 2006年5月18日 (木) 23時46分