久々に読者として、自分のことは棚に上げて月旦
月旦とは人物評の事ですが、まあ硬い事言わずに。
最近読んだ漫画。と言っても研究半分。好きな漫画だけ読んでるわけにはいかないの。
●リアル 6巻 (井上雄彦先生)
ぎょへー。もう何もいうことはありませんです。凄い。泣ける。高橋話でこんなにぐっと来るとは、1巻の時には考えられなかった。高橋の学歴ランク志向の歪みを作った母親の価値観はリアリティーがあって非常にヤな感じがするのだが、ところどころに挿入される、女手一つで苦労してるシーンに胸がぎゅっとなる。今回の巻では「毎年冬はあのダウン…もう何年同じの着てるんだ」にやられた。
対して高橋父。母に比べてスッと共感できちゃうのはやっぱ自分が男視点から見てるからだろうか。高橋自身も本当に一緒の喜びを味わえるのは男親だと思っていて、それにずっと飢えていた。覚えたバスケの技を、ずっと父親に見てもらいたかった。でももう見せられない。それを父親の前でついに吐き出す場面は凄い。涙ナシには読めません。くそっ、俺は足元にも及ばない。
戸川。いくら「リアル」とは言っても、常に極限を目指すこの天才がいなければ、やはりここまで熱中しては読めないだろう。自分がぐっとくるのはどうしても、ちょっと常軌を逸した鼻っ柱の強いこういう奴。しかし、戸川は上のチームの誘いを断るのだろうか、どうなのか。井上先生がどう描きどういう答えを出すのか、興味がある。
●結界師 1~3巻 田辺イエロウ先生
「まだいずれサンデーに挑戦する気があるなら読んどけ」と弟にせっつかれて、このたびアニメ化を機にようやく読む。確かにちゃんと面白い。結界のアイディアなんか、シンプルでわかりやすく、結界形成の手順も面白く、その上漫画として「使え」て、ギミックとして非常にいいです。コダマのような式神もかわいい。と、ここまで設定が洗練されてるにもかかわらず、設定話におぼれずちゃんとキャラドラマから話を作ってるので、漫画として読みやすく、面白い。この辺はさすがサンデー。だけど、うーん、個人的好みでいうと悪い意味でサンデーっぽいのが、どうにも「家の周りから出ようとしない」ってところなんだよなあ。目指すものも、今のところ「昨日よりちょっと成長した自分」くらいの、なんとも地に足がついた感じ。ああっ、いらいらするっ! ワンピースやハンター×ハンターのような、或いはデスノートのような、アクメツのような、広い世界に飛び出て「海賊王になる!!」とか、「新世界の神になる!!」とか「悪は全て殺しつくす!!」とか(笑)、そういう突き抜けたスカッとした野望がないものか。このどうにもならない窮屈間が、読んでて辛い。「悩んで成長」はいいんだけど、苦悩は苦悩でも極限を目指す苦悩であって欲しい。
…いや、これはこれで作品としては優れてて文句ないです。ドラマもちゃんとしてて非常にいい作品だと思います。ただ、サンデー読者はこういうのじゃないと共感できないとすると、自分が描くには辛い…、と、そういう気分ですね。今のサンデーの担当さんとは非常に気が合うと思ってるんですが、仮にそれで僕の満足いく連載取れたとしても、僕の感覚でここの読者の支持が果たして得られるかなーと、そんなことを考えて、読んでて辛くなります。やはりサンデーにこだわるのは足かせなのか?
とかなんとかぶつぶつ言ってたら、弟から「先に行くとどんどん燃える展開になるって!」と言われる。そっそうなのか? 確かに1巻あたりはまだそうでもないんだけど、2、3巻と進むにつれて面白くなっていってるからなあ。「うしおととら」だって大冒険が始まったのは3巻、4巻あたりからなんだから、まだ判断は早い、のかも。頑張って続きも読みます。面白い事は面白い。
あと、田辺先生の作品、昔ジャンプで1冊だけ「七つの海」という単行本を出されていた岩泉舞先生の作風を思い出させてくれました。これはこれで当時大好きで、単行本も持ってるんですよ。こういう作風が増えたと言うのは、少年誌も変ったものだと思いました。
●餓狼伝 1~18巻 板垣恵介先生
うひゃあ。こっちは突き抜けてます。スカッとします。
なんてったってバキ先生だもん。18冊一気に気持ちよく血をたぎらせながら読めました。
燃える! しかし話は進まない!!(笑)
●ああ播磨灘 1~25巻 さだやす圭先生
こちらもJ機関にあった1、2巻を読んで止まらなくなって、次々購入。
相撲界の慣習、因習ことごとくコケにし、並み居る強豪力士を全てなぎたおす、ピカレスクロマン!読者の共感をも拒否するかのような悪漢ぶりは並じゃないです。「ぼけー」と言う決め台詞が素敵。相撲にまったく興味のない僕でも面白い。と言うか、まさに相撲という「設定」に関係なく、「主人公のキャラで読める」。こうでなくては。
大人気なんで気にはなってた。
でも個人的にはあずまんが大王ほどガツンと来なかった。
とりあえずどんなのか確認できたので満足。
●皇国の守護者 1巻 佐藤大輔先生 伊藤悠先生
ウルジャン連載らしいです。ジョジョ7部と同じ雑誌か。日露戦争あたりの日本をモチーフにしたらしいファンタジーです。明治の日本軍っぽい名前や世界観なのですが、竜やサーベルタイガーなども出てくる、あくまで架空の世界。敵もロシア「っぽい」軍隊です。絵や世界観が好みなので、前々から気になってました。しかし、一方で、好みとは言え参考にしてはいけないマイナーオーラもぷんぷん。とは言えたいていの本屋で見かけるので発行部数もそれなりにあると言うこと。読者に受け入れられてるわけで、興味を持って買った。
…案の定、読みにくいッ!!! 架空の世界でいきなり軍隊だから、情報量が多すぎてやはり入りにくい。なにをやりたいかネームのメカニズムはわかるんだけど、スッと気持ちが入っていかない。正直、こういうのに興味薄い人には薦められない。
しかし、頑張って一生懸命読むとやはり僕好みのオーラがちらほら…。特に小隊長レベル特有の苦悩や戦術レベルでの駆け引き、戦場の冷酷な現実など、「紡血」描く前に読んでおけばよかったと感銘を受ける。1話は読みにくかったけど、2話、3話と進むにつれて多少読みやすくなっていくし、その話でなにをやりたいかも毎回工夫されているので、読み終わった後には結構満足感がある。読むのに苦労するけど。それとなによりやはり絵の魅力か。この辺はほんとに羨ましい。
あと読みにくいと言っても一応ちゃんと、「設定ではなく主役のキャラクターを魅せるためのドラマ」と言う作りは押さえているので、致命的な読みにくさではないです。マニアックな設定ですが、きっちり漫画としての最低限のイロハはおさえてある。あたりまえだけどこの辺はさすが集英社、と言う事なんだろうなあ。
でも同じ路線?のマイナーメジャーとなったベルセルクの1巻あたりと比べると、やはり格段にハードルが高いと思う。
●リーンの翼 1、2巻 大森倖三先生
買っちゃいましたよ。どんどんヒートアップするサコミズ王にやられて(笑)。…と言うか、なんですかこの絵のレベルは!!! 高すぎ凄すぎ。今更ながら一緒に載ってたのが恥ずかしいッ!!! この方、どんなキャリアが…? って、後ろのプロフィール見たら、これがデビュー以降コミックス2冊目って!!! うそでしょ。うそだと言って!!(笑) …アニメーターとしてのキャリアーとか積まれてるのかなあ。でも、描かれる漫画のコマ割りとか見ると、アニメーター出身特有の匂いは少なくて、ネイティブ漫画家の感性な感じするんだよなあ。はあ…。
しかし。やはり申し訳ないのですが、これだけの画力を持ってしても、1話は「皇国の~」以上に全然読みにくかった。キャラから話を作ると言う漫画の鉄則を押さえず、設定、状況から入っちゃってるんですよね…。でもこれは大森先生の責任ではないと思います。あとがきを見ると、「アニメのコンテ通りにやれ」という無茶な縛りがあったようですから(笑)。(惨いとしか言いようがないけど、富野監督の出した条件だからしょうがないか…)後の話になるにつれてキャラクターの目的・モチベーション・その障害を軸に話が動くにつれ (具体的にはサコミズ王(笑)) 漫画としてどんどん読みやすく、面白くなっていくわけですしね。
それでもやはり、紡血も一緒ですが、2巻3巻で表現するには詰め込みすぎでハードルが高いと思う。このくらいの分量の設定・ドラマだったら、もう少し、ゆっくりじっくりと積み上げて魅せて行かなければ、真に漫画としてベルセルクやワンピースに迫る面白い作品にはなれないと思うんだが…。
しかしこの条件の中でこれだけのモノを魅せられる大森先生の画力というか腕っ節は物凄いです。自分のと絵見比べるとホントに恥ずいです。だから見比べるの禁止。
★★★
書いてて気づいたのですが、自分の理想とする目標は、「皇国の守護者」や「リーンの翼」のような物語を、「餓狼伝」「リアル」くらいの引き込みで読ませることだと思った。「ベルセルク」がそれを実現してるわけだし、「ワンピース」「ハンター×ハンター」だってまったくの架空世界なわけだから、マニアックな設定でもやり方によっては不可能ではないはずなのだ。(「結界師」は読みやすいけど、僕とは向いてる方向が違う気がする)
たまには自己確認で文章にするのも必要だな、うん。
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