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できるよ!

アーサー・C・クラークさん。

「われはロボット」のアイザック・アシモフ、「宇宙の戦士」のロバート・A・ハインラインと並ぶSFの古典中の古典作家の方だし、ほとんどの人にとってきっとむしろ今の今まで生きていらっしゃった事がビックリ、90と言うお歳といい「大往生」と言えるのに、なんで自分がショックだったかと言うと。小説家として「もう新作が読めない」とかだけじゃないですね。だって今だって俺全部読めてるわけじゃないし。

やっぱしこの人には、現実の宇宙開発をいつまでも見ていてもらって、「できるよ!」とコメントを発し続けていてもらいたかったんだと思います。                     
                 ハ_ハ  
               ('(゚∀゚∩ できるよ!
                ヽ  〈 
                 ヽヽ_)

この方の作品の特徴は、豊富な科学知識や工学系の知識に基づいた圧倒的なリアリティー。誤解を恐れず言い切ってしまえば、「本当に出来る(あり得る)」ことを描いているのですよね。

その描写に基づいて話が進むので、ぶっ飛んだ出来事が起こってもある種現実に基づいたドキュメンタリーのように読めてしまう。「宇宙のランデヴー」なんてうちらの世代的に(ビジュアル的には)「ガンダムにも出てきたシリンダー型のコロニーが宇宙の深遠から地球に近づいて来る」ってだけの話(勿論ガンダムの方が後の作品ですが)なんだけど、読んでる時の現実感、その空恐ろしさ、それと同居するドキドキワクワク感ったらなかった。

立花隆さん対談集「宇宙を語るⅡ」にあるクラークさん紹介の前文から抜粋すると。

(クラークさんは) 単なる物語作家ではなく、すぐれた科学評論家、未来論者であり、特に宇宙開発については、その最大の預言者と言われている。1945年に衛星通信システムの原理を考え出して以来、クラークさんは多くの作品の中でさまざまな宇宙開発のアイディアを提供し続け、その相当部分が現実の宇宙開発の中で実現されてきた。そのため「現実の宇宙開発は、アーサー・C・クラークの小説を模倣する」とまで言われているほどである。

と書かれています。

静止衛星軌道をちゃんと計算して、先には論文にして、後には小説にして、ちゃんと実現可能な方法で世に出した最初の方のようで。この静止軌道のことを別名「クラーク軌道」と言うそうです。この軌道を回る静止衛星を通信衛星として利用する事を最初に提言したのもこのクラークさんの論文だそうで。「世界中が電波で一つにつながる」と言うのは素晴らしいアイディアであり、また当時(1945年)としてはそれこそ絵空事と受け取られたようですが、現実の技術発展はこの論文・小説から影響を受ける形で進み、実現化し、今ではうちらの生活の中でその利用は当たり前になっています。

(余談ですが、こういう例を見ると、フィクション・イマジネーションの現実に及ぼす力の凄さと言う物に、自分の事でないながら誇らしくなる。エヴァの映画のときに宮崎監督が「そこには何もないことを証明してしまった」とか言っていたが、あの辺の人たちの考える事ってどんだけネガティブなんだろう?)

クラークさんの提言した技術で言うともうひとつ、忘れちゃいけないのが楽園の泉で描かれた「軌道エレベータ(宇宙エレベータ)」

エレベータと言っても塔のように地面から立てると言うイメージではなく、36000㎞上空の静止衛星から蜘蛛の糸のようにラインを垂らして来て地上までつなげる、と言うイメージ。例によってクラークさんは「できるよ!」と言ってくれていて、実際、1992年のスペースシャトルのミッション中に、その第一歩となる実験(テザーを数十メートルにわたって垂らす)が行われたそうです。クルーの手にはクラークさんの「楽園の泉」がしっかりあったとか。

個人的にはこれかなり期待していて、素人考えだと「できるんじゃねーの?」と思ってしまってます。なによりスペースシャトルも撤退間近となり、また噴射ロケットの非効率さっぷり(ほんの数グラムの質量を衛星軌道上に持ち上げるのにどれだけの図体のロケット・燃料が必要か)を考えると、恒常的な宇宙との往還方法の確立なくして飛躍的な宇宙開発はないのじゃないか、と思ってしまうので…。

が、やはりいろいろ問題があるようで。

軌道エレベータの現在における一番の技術的な問題点は、それに耐えうる材料がない、と言うことらしいですが、数年前「カーボンナノチューブ」が発見された時に、「これで出来るらしい!」と大喜びしてしまいました(笑)。こんな記事も出たりして、俺結構本気にしちゃったんで(笑)。

が、どうも今回いろいろ調べてみると、カーボンナノチューブでも強度的問題が解決されるわけではなく、まだまだぜんぜん未来技術の域を出ないようで。うーん、後は大きな問題は経済的な話とか政治的な話だけだと思ってたんだけどなあ(笑)。しまったなあ、正月に実家に帰った時に親父と「そんなん出来るか!」「金かけりゃ、もう出来るんだよ!」と喧嘩しちゃったよ(笑)。(でも1945年時点の人工衛星や月旅行よりはよっぽど絵空事ではないと思うけどね)

軌道エレベータは「トップをねらえ!」の軌道ロープウェーとか、「∀ガンダム」のザック・トレーガー(あれはスカイフックですね)の根元にあった遺跡とか、「エウレカセブン」とか、最近ではまさに「ガンダム00」とか、アニメではいっぱい眼にすることができると思います。漫画だと「銃夢」とか。うーん、日本はなんやかんや言ってSF大国だなあ。「銀英伝」でもフェザーンにあったっけな。基本的に宇宙戦艦のようなでかい図体を惑星の重力圏から離脱させるのってとんでもない力必要だと思うので、後年の作品になるにつれ戦艦自体は大気圏外で建造され、行き来には小型シャトルなり軌道エレベータなり工夫を凝らしてくる。ヤマトとかホワイトベース凄すぎ!!(笑) 波動エンジンとミノフスキークラフト万歳。でもアーガマは一度降りたらもう宇宙に上がれなかったな…

さて。

クラークさんと言えば一般的にはやはり「2001年宇宙の旅」ですが。

それに関してよく聞こえてくるのは、「もう2008年なのに科学技術全然追いついてないじゃん!」(=だから結局SFは絵空事だよ!)と言う論調です。

だがちょっと待って欲しい!!!

あの映画(小説でもいいですが)に出てきた、HALと言うコンピューター。 あれ、覚えていますか? ボーマン船長がHALの中枢いじった時、確か物凄いでっかい真空管をいじってとっかえて…とやっていましたよね?

あの時のコンピューターに比べて、今自分たちの目の前にあるパソコン、どんだけ凄いんでしょう。(勿論人工知能までは行ってないですが、そういう意味ではなく)

前述の通信衛星のアイディアにしても、クラークさんは、「当時(1945年あたり)、空軍でレーダーを扱う仕事をしていた自分は、レーダーに使われていた真空管は何千本もあって毎日2、3本は焼き切れていたので、修理スタッフの要らない高度な機械など想像出来なかった。だから人工衛星と言っても、もっと巨大な有人宇宙ステーションのようなものを想像していた。ところがその後、トランジスタが発明されて状況が一変した。現在、車より小さいくらいの人工衛星が様々な機能を果たしている」と言っています。

ある点では確かにあの頃の予想に追いついていないかもしれない。でもある点では、あの時は絵空事だったくらいのビックリ未来社会に、今自分たちは生きています。(パソコンとか携帯電話とかネットとかGPSとか、3DCGとか、Suicaとか、主に電子通信情報映像関連凄いと思いません? 少しづつ順を追って体感してるんで、実感がないだけかと。)

だからですね、少々順番が変わってるだけで、社会が前向きに進んでいれば、できない事はないと思うんですよ。まさに

高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。

の法則。

宇宙開発が進んでいないのは、どちらかと言うと技術的な問題と言うより、経済的な問題だったり、あとでかいのは精神の停滞だったりすると思いますね。とにかく19世紀~20世紀初頭に比べて今は、暗い! 後ろ向き! 小市民的! そりゃいろいろあったし、反省も必要かもしれないけどさあ! 

★★★

とにかく今回のクラークさんの訃報を聞いてまず思ったのは、ここまで生きていてくれたのだから、「人類が再度月に達するところを見て欲しかった」「月面基地建設を見て欲しかった」「有人火星探査を見て欲しかった」「そしてそれぞれにコメントと、できるよ!と言う応援の言葉を発し続けて欲しかった」です。

もう完全に「古典」の方、歴史上の人物だし、90歳だったし、むしろ今まで良く生きていてくださったと言うべきなのでしょうが、なんかむしろそれだけに油断してた、と言うか、いつまでも生きつづけられる様な錯覚があったんですな。マイミクの先輩方も言っておられたのですが、なんかずっと生き続けるSF仙人みたいなイメージがありまして…。

うーん、ただでさえ弾け切れない宇宙開発にさらにダメージを負ったような、そんな気分。本当はねえ、跡を受け継ぐうちら次世代のエンターテイナーたちがフィクションの面からも宇宙開発を盛り上げていかなきゃならないんだけど。うーん、その入り口にも立ってない自分が不甲斐ないな。頑張んなきゃなあ。

最後にまた、立花隆さんとの対談でのクラークさんのお言葉抜粋

有名な探険家のナンセンは、「探検をしなくなった人間は、もはや人間ではない」と言いました。われわれ人間は好奇心の生き物なのです。太古の昔、人類の祖先は目先の安全を考えるなら、アフリカにとどまっていてもよかった。ジャングルは人間の生存条件としてはもっとも恵まれた環境を与えてくれていましたからね。しかしわれわれの祖先は不毛なサバンナへ進出し、地球上にあまねく広がっていった。もしジャングルにとどまっていたら、気候の変動で絶滅していたでしょう。さまざまな環境に散らばっていったからこそ、生き残る事ができたのです。

私は多くの人が有人宇宙探査をすべきだと思っていると確信しています。新たなるフロンティア、そして冒険がなければ、われわれの文明は停滞し、その結果大いなる退廃に陥ってしまうでしょう。

中略

宇宙開発の未来は、われわれがいかに安全で効率のよい宇宙への輸送手段を獲得するかにかかっています。しかしそれは必ず実現し、人類は新たなる進化を続けていくでしょう。

                 ハ_ハ  
               ('(゚∀゚∩ できるよ!
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                 ヽヽ_)

★★★

追記:

>クラークさんは昨年12月、90歳の誕生日に友人向けの別れのメッセージを録音。その中で、生きているうちに地球外生命体が存在する証拠を見たかったと述べていた。

太陽系外惑星で有機物を初確認=生命の存在可能性高まる-米英チーム

もう一歩! もう一歩なんだけどなあ!!!

太陽系外とまで行かなくても、エウロパあたりには普通に何かしらいると思うんだけど!

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コメント

              ハ_ハ  
            ('(゚∀゚∩ できるよ!
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本日の合言葉ですねw

投稿: BASARA | 2008年3月20日 (木) 12時11分

BASARAさん>
(笑)
そうですね(笑)。
できないと言った瞬間に本当にできなくなると思うので、最近の某御大の言動や、リュシータ・トエル・ウル・ラピュタたんの「人は土を離れては生きていけないのよ!」と言うセリフは、一利よりも百害の方が多いと思うのれす。ラピュタ好きだけど。

「諦めたらそこで試合終了ですよ」と言うセリフがナチュラルに出てくるスポーツマンはやはり凄いや(笑)。こっちが正しい。

投稿: TAK@森田 | 2008年3月20日 (木) 12時34分

アバウトミーではコメントありがとうございます。ブログ拝見して違う角度から物事をみる重要性を新たにしました。この年になると分かっているつもりでもこれまで生きてきた経験の中で物事を見がちです。ただ、生命ということを考えると「人は土を離れては生きていけないのよ!」はやはりその通りだと思います(仕事「農業」柄もありますが――笑)。時々お邪魔しますが、よろしくお願いします。

投稿: とんぼ | 2008年3月21日 (金) 11時50分

いえいえこちらこそ。そう言っていただけて恐縮です。

土を離れては>
現実問題として、もしそうでしかないとしたら、いずれ人口が土の許容量を超えたら限られた土を奪い合って殺しあう(=戦争)しかないのですよね。
と言うかその繰り返しこそが人類の歴史なわけで。
憎しみの連鎖だとかイデオロギーだとかは自分は二義的なものでしかないと思うんですよ。

限られたパイを奪い合う(=戦争)か、
パイそのものを増やす(=フロンティアスピリット)か

この本質は、無から有を生み出す魔法がない限り
絶対変わらないと思います。
ところが得てして戦争は悪だ!と言う人に限って
フロンティアスピリットも否定したがると言う(笑)

この辺はこんなところで書くのじゃなく、うまいこと作品のテーマとして昇華して行きたいなーと思ってます。
しかし志だけあって実力と実績が伴ってない悩ましさ。
描きたいことはシビアな事なのに、今の自分は所詮甘ちゃんです…

投稿: TAK@森田 | 2008年3月21日 (金) 12時22分

追記:
「農業」凄いと思っています。
土と折り合う職業、尊敬しています。
でも狩りから農業に移った時こそやはり「自然改造」の人間の業のスタートだとも思っています。(だからこそ凄いとも思っていますが)
この辺やはり頭でっかちなだけの言い草ですみません…

投稿: TAK@森田 | 2008年3月21日 (金) 12時31分

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