今期ドラマ「JIN -仁-」
今期ドラマ、9時台の「JIN -仁-」と「不毛地帯」。どちらも面白い。
「不毛地帯」については、余裕があったら後日。
今日は、「JIN」について。
TBS日曜劇場 「JIN -仁-」
http:// www.tbs .co.jp/ jin2009 /
「不毛地帯」については、余裕があったら後日。
今日は、「JIN」について。
TBS日曜劇場 「JIN -仁-」
http://
「JIN」は、原作は、古くは「六三四の剣」、ちょっと前だと「龍-RON-」で有名な大作家、村上もとか先生の作品。「龍-RON-」は全巻持ってます。
「JIN」も、今までもスーパージャンプの表紙で何度か見かけてて気になっていたのだが、ちょっとタイミングが合わず、手を出していなかった。表紙絵から、よくある普通の「江戸時代の赤ひげ先生」的な人情話を想像しちゃって、当時はそこまで食指が動かなかったんですよね。
ところが、今回ドラマを見てビックリ。
かわぐちかいじ先生の「ジパング」のような、「現代医学+幕末」の、タイムスリップ歴史物だったとは。
ドラマの1話が面白かったんで、勢いで、漫画の方も全巻大人買いしちゃいました。もともと好きな作家様ですので。
原作も、期待に違わず面白かった!!!です。
またまた続きが楽しみな作品に出会ってしまった。
(知っておられる方も多い作品だと思うので、この言い方は恥ずかしいんですけどね(^^;))
●●●
タイムスリップ歴史物、と言うのは、冒険物好きな要素を持つ中高生なら一度は妄想するような、ある意味陳腐と言われかねない設定。(実際、このドラマの紹介記事にも「一見荒唐無稽」と書かれててカチンときた(笑)。)
だけど、陳腐と言われるのは、逆にいうと王道で、かなりの人間が「そういうの読みたい」と思っている、魅力的な妄想ではあると思います。
だけど、生半可な作家が、「それによって何を描きたいのか」というビジョンもなく生半可な設定でやると、どうしても陳腐になってしまう。俺もやりたいけど、何かプラスアルファを思いつかない限り、難しいでしょう。(あ、もうすでに昔、「CLOCK CLOCK」と言う作品やってるんだけどね…(^^;)。)
それが。
かわぐちかいじ先生が「ジパング」を描き始められた時も思ったんですが、これほどの大人の大作家さまが、明確なテーマとビジョンを持ってその力量の粋をつぎ込んで正面から重厚に描かれると、なんと素晴らしく楽しめる作品になることか!
●●●
さて、「JIN」。
上記のように、好きな漫画家様の作品にもかかわらず、今回、僕はドラマから入ってしまいました。
そして、幸運なことに、そのドラマの出来が素晴らしく、面白かった!
1話の、幕末にタイムスリップした直後の、道具もない中での脳外科手術のシーンの迫力は、原作を超えていたかもしれません。
ごめん、俺日本のドラマ舐めてました。今回凄い良かったです。
それは、演出の良さ、主役の南方仁を演じる大沢たかおさんの熱演もさることながら、なんと言っても患者(斬られた武士・橘恭太郎)の母親(橘栄)を演じた女優さん、麻生祐未さんの迫力がすさまじかったからだと思う。
「ひぃーっ、ひぃーっ」って言って。
そりゃ、得体のしれない男がノミ使って息子の脳天に穴開けてたら、そりゃそうなるわな(^^;)。コーン、コーン、って響く音の中で、そりゃ正気じゃいられない(笑)。必死で妨害しようとするのも当たり前。でもこっち(視聴者)からしたら、仁のやってることが唯一患者を救う手段なのもわかっているし、その手術の妨害が致命的になるのもわかる。でも、俺ら(現代人である視聴者)だって、医学には素人なんだから、こんな場面生で見たら絶対「ひぃーっひぃーっ」ってなるよ(笑)。なんという緊張感!
冒頭の現代劇のシーンやタイムスリップのシーンでは、正直そこまで引き込まれてはいなかったんです。
が、この脳外科手術のシーンで一気に引き込まれました。
幕末にある道具での手術の描写が重厚で、撮り方も良くて、説得力も、迫力もあった。
原作からのシナリオのアレンジ・再構成も良かったです。
仁に原作にはないトラウマを設定し、あの場面で気持ちが盛り上がるようになっている。
上記の変更点は若干主人公のキャラが変わってしまうので、仮に原作を先に知ってて、もとの仁のキャラを愛していたら、首をかしげる気分もあったかも知れないです。
でも、全11回で終わる1クールのドラマとライブ的な連載漫画とは作り方が違うわけだし、やはりドラマのシナリオとしての盛り上がり方が凄く良かったので、このアレンジはわかる気がします。
あと、龍馬がより副主人公格になってて、原作よりも濃厚に幕末史のメインをなぞりそうな感じですね。
現在16巻で進行中の、竜馬暗殺阻止編まで一気にやっちゃうのかな?
(そしてそこがラスト?)
原作との相違点。
どちらが上とかじゃなくて、どちらにも好きなところがある感じです。
●仁がひげ面じゃない。
…ドラマから入った俺は大沢さんの仁も好きだけど、原作とはちょいとイメージ違いますね(笑)。
●仁の現代編にいろいろアレンジが。
…ドラマ版で現代にいる昏睡状態の婚約者。原作にはいないんですね。それに関連したトラウマ設定も、原作にはなし。
●その婚約者と花魁・野風が瓜二つ
…当然、この設定も原作にはなし。原作の野風がいいキャラだったのと、ヒロイン・咲がかわいいんで、この設定によってドラマ版がどうなるのか、仁と咲との関係がどうなっちゃうのか、ちょっと怖い。ドラマ版は野風に持ってかれそうだな‥
●仁がちょいと弱い。
…原作の仁は、歴史を変えることを恐れるよりももっと先に目の前の患者のために手が動いてしまう印象。悩んではいるけど、その悩みのために手を止めたシーンはないと思う。そこがカッコ良くて咲も惚れてくれたんだと思うから、ちょっと残念。ドラマ2話の、咲(綾瀬はるかさん)に叱咤されてやっと覚悟するシーンは、ドラマ界特有の「女性キャラを強くして活躍させる」シーンなのかなーと、ちょいとうんざり。相対的に仁のキャラが原作より情けなくなっちゃうし、あれで咲のキャラも、原作の濃やかな感じよりは少し無神経に見えちゃいますしね。
とは言え、主人公の「葛藤→決意」という流れは気持ちが盛り上がるので、ドラマ的にはこちらの方が燃えるのは確か。裏を返していえば、原作では「最初から揺らがない」ことによる物足りなさがあるのも確かですので。
ドラマ2話ラスト。上記のアレンジがあったからこそ盛り上がった。
僕の作り方の手法だと、ドラマ版に近そうです。
ああ、ドラマ版、盛り上げの演出センスは、シナリオ・絵作りともに好きだなあー。龍馬と緒方洪庵が隔離紐をくぐって入ってくるところの盛り上げ方なんか、大好き。(でもあれも、原作の咲が入ってくるところも健気で好きなんだけどなあー。)
●麻疹(はしか)と虎狼痢(コレラ)のエピソードを統合
連載漫画的な作りを、うまく1クールのドラマを踏まえたエピソードにアレンジしてると思います。
が、その流れで、麻疹になった咲を助けるシーンがなくなって残念…。あそこ萌えポイントなのに(笑)。
●龍馬と勝海舟の登場順番が逆
原作では勝と先に知り合って、龍馬とは勝に引き合わされるんですね。
しかし、ドラマ見て思ったんですが、やっぱり龍馬はどの作品見てもかっこいいし、頼りになるなあー(笑)。なんか、龍馬と出会ったら、「もう大丈夫だ!!」って気になっちゃうもん(笑)。
…と思ってたら、原作で、仁が「しまった、小説のイメージでついつい信用してしまった! 実際の龍馬がどんな人物かなんてわからないのに…」と言うセリフがあって笑いました。ドラマでも言って欲しいけど、もうかなり仲良くなっちゃったから今更かな。
●●●
原作では、この後、ますます幕末の医療史に食い込みます。
ペニシリンをどうやって作るかとか、どうやって大量生成するか、とか、どうやって安定して保存しておくか、とか。「輸血」をどうするか、とか。
こんなの、全部、「オーパーツ」。「この時代にあってはならないもの」。
麻疹、コレラ、梅毒、など、当時の脅威の病にうまく絡めてて、あえて幕末を舞台にタイムスリップさせた必然性がある。
本道(漢方)医学と蘭方(西洋)医学の確執とかにも絡んでくる。
当時、漢方は新興の西洋医学に押されていたわけだけど、主人公・仁の現代医学は、当然、当時の西洋医学よりもずっと上なわけだし。
ドラマ2話で綾瀬さん演じる咲が言った「目の前の苦しんでいる人を助けられないほどの事情とは、なんなのですか(目の前の人を救う以上の大切なことがありますか)」と言うことをそのまま突き詰めていくと、「もっと多くの人を救うには、もっと多くの人を救うには」となり、必然的に当時ではあり得ないほど医療史を進めていってしまうわけで。
原作でも、この先、日本の医学界のみならず、世界にもその影響は波及していく。その、「歴史を変えちゃってやばいんじゃないの」と言うざわざわ感は、ある意味「ジパング」以上。
また、当然のことながら、医者の中には、仁の未来医療技術のハイレベルさを肌でわかりながらも、自分たちの積み上げてきたものの価値を無にされかねないと恐れ、受け入れられない者もたくさんでてくる。
一方で、緒方洪庵や西洋医師ヘボンたちは、同じように仁を恐れつつも、正しさを認め、後押ししようと考えるんですね。幕府医学館の大物も、仁を潰しに来るかと思いきや、意外に理解があり、融合を図ろうとする。一見保守的権力者側の巨魁に見えても、ここまで来る人間は違うのかもなあ、と思った。大物だ。
「新しいものに対する怖れと拒否反応」も、「JIN」のテーマとも言えるかもしれません。
人間って保守的なものですからね。
新しいものをまず恐れ、目を塞いでしまう気持ちは分からなくもないです。
テレビ、漫画、ゲーム、ネット、ケータイ…各時代で、それぞれ、やり玉にあげられてきました。
「この頃の若い者は」と言う言葉は、古代エジプトの碑文からも確認されると言います。(…これは笑い話だったかな?(笑))
でも、それはもったいないと思う。
古い知識は尊重され、受け継がれ、敬意を抱かれるべきものですが、若い新しい発想(=未来の技術)も、同じだけ貴重な、学ぶべきものであるはず。
スケールの大きい仕事をする人は、「新しいもの」に目を塞がない柔軟性もまた、凄いのですよね。
また、仁の側も、古いものは無価値と断じるのではなく、たとえば当時西洋医学の波に押されて、現代医学ではすたれてしまった漢方(本草学)の方にこそ驚きを感じ、学ぼうとする。
原作の最新刊の段階では、その二つの道の統合こそ現代以上の医学の発展の予感がして、楽しみになってきています。
…発展が果たして幸せか、自然に帰ろう、と言う後ろ向きな議論も、最近では目につきますがねえ(苦笑)。そこでJINを見て、「目の前の理不尽な死から、目をそむけられますか?」と問いたい(笑)。その積み重ねこそが発展なんでしょ、と。そして現代の医療レベルを保つのにも、膨大なエネルギー消費が必要なんですよ、と。自然に帰ろう、と気楽に耳触りのいいこと言うけど、コレラで子供がバタバタ死ぬような江戸時代の文明レベルに戻れますか、と。ならばもっと未来を見て、新エネルギーなり宇宙進出なりのさらなる発展に希望を賭けなきゃあかんでしょう、と。…と、これは余談。)
●●●
自分はSF好き宇宙好きであるのと同時に歴史ファンでもあり、中でも幕末オタであります。司馬遼太郎はほぼ全部読んでるはず。漫画でも幕末ものは小山ゆう先生の「おーい!竜馬」をはじめ、そこそこ網羅してると思います。(今「ジキルとハイドと裁判員」と同じスペリオールで連載されている小山ゆう先生の「AZUMI」も、「おーい!竜馬」と同じ世界を舞台にした幕末篇であります。あの勝海舟も、すでに登場していますよね(笑)。)
また、現代劇の中では、「ブラックジャック」「振り返れば奴がいる」「医龍」など、生死にかかわるテーマの医療ものは、かなり好きな舞台です。
そんな僕にとって、この「JIN」は、かなりのヒット作品。今まで読んでなかったのが悔やまれますね(笑)。まだまだ面白いのを取りこぼしてるんだなあ。
「幕末×医療」モノでは、はずしちゃいけない名作があります。
手塚治虫先生の、「陽だまりの樹」です。
この作品も、主人公であり手塚治虫先生の曾祖父である手塚良庵とともに、緒方洪庵や福沢諭吉、村田蔵六(大村益次郎)など適塾の面々が登場し、幕末の動乱の中で牛痘の種痘所開設などに奮闘する姿が描かれています。「JIN」と同じく、色街も出てきます(笑)。
「JIN」で、幕末医療に興味をもたれた方がいらっしゃったら、こちらもぜひどうぞ。
ああー、「JIN」で手塚良庵出てこないかなあ(笑)。
「JIN」も、今までもスーパージャンプの表紙で何度か見かけてて気になっていたのだが、ちょっとタイミングが合わず、手を出していなかった。表紙絵から、よくある普通の「江戸時代の赤ひげ先生」的な人情話を想像しちゃって、当時はそこまで食指が動かなかったんですよね。
ところが、今回ドラマを見てビックリ。
かわぐちかいじ先生の「ジパング」のような、「現代医学+幕末」の、タイムスリップ歴史物だったとは。
ドラマの1話が面白かったんで、勢いで、漫画の方も全巻大人買いしちゃいました。もともと好きな作家様ですので。
原作も、期待に違わず面白かった!!!です。
またまた続きが楽しみな作品に出会ってしまった。
(知っておられる方も多い作品だと思うので、この言い方は恥ずかしいんですけどね(^^;))
●●●
タイムスリップ歴史物、と言うのは、冒険物好きな要素を持つ中高生なら一度は妄想するような、ある意味陳腐と言われかねない設定。(実際、このドラマの紹介記事にも「一見荒唐無稽」と書かれててカチンときた(笑)。)
だけど、陳腐と言われるのは、逆にいうと王道で、かなりの人間が「そういうの読みたい」と思っている、魅力的な妄想ではあると思います。
だけど、生半可な作家が、「それによって何を描きたいのか」というビジョンもなく生半可な設定でやると、どうしても陳腐になってしまう。俺もやりたいけど、何かプラスアルファを思いつかない限り、難しいでしょう。(あ、もうすでに昔、「CLOCK CLOCK」と言う作品やってるんだけどね…(^^;)。)
それが。
かわぐちかいじ先生が「ジパング」を描き始められた時も思ったんですが、これほどの大人の大作家さまが、明確なテーマとビジョンを持ってその力量の粋をつぎ込んで正面から重厚に描かれると、なんと素晴らしく楽しめる作品になることか!
●●●
さて、「JIN」。
上記のように、好きな漫画家様の作品にもかかわらず、今回、僕はドラマから入ってしまいました。
そして、幸運なことに、そのドラマの出来が素晴らしく、面白かった!
1話の、幕末にタイムスリップした直後の、道具もない中での脳外科手術のシーンの迫力は、原作を超えていたかもしれません。
ごめん、俺日本のドラマ舐めてました。今回凄い良かったです。
それは、演出の良さ、主役の南方仁を演じる大沢たかおさんの熱演もさることながら、なんと言っても患者(斬られた武士・橘恭太郎)の母親(橘栄)を演じた女優さん、麻生祐未さんの迫力がすさまじかったからだと思う。
「ひぃーっ、ひぃーっ」って言って。
そりゃ、得体のしれない男がノミ使って息子の脳天に穴開けてたら、そりゃそうなるわな(^^;)。コーン、コーン、って響く音の中で、そりゃ正気じゃいられない(笑)。必死で妨害しようとするのも当たり前。でもこっち(視聴者)からしたら、仁のやってることが唯一患者を救う手段なのもわかっているし、その手術の妨害が致命的になるのもわかる。でも、俺ら(現代人である視聴者)だって、医学には素人なんだから、こんな場面生で見たら絶対「ひぃーっひぃーっ」ってなるよ(笑)。なんという緊張感!
冒頭の現代劇のシーンやタイムスリップのシーンでは、正直そこまで引き込まれてはいなかったんです。
が、この脳外科手術のシーンで一気に引き込まれました。
幕末にある道具での手術の描写が重厚で、撮り方も良くて、説得力も、迫力もあった。
原作からのシナリオのアレンジ・再構成も良かったです。
仁に原作にはないトラウマを設定し、あの場面で気持ちが盛り上がるようになっている。
上記の変更点は若干主人公のキャラが変わってしまうので、仮に原作を先に知ってて、もとの仁のキャラを愛していたら、首をかしげる気分もあったかも知れないです。
でも、全11回で終わる1クールのドラマとライブ的な連載漫画とは作り方が違うわけだし、やはりドラマのシナリオとしての盛り上がり方が凄く良かったので、このアレンジはわかる気がします。
あと、龍馬がより副主人公格になってて、原作よりも濃厚に幕末史のメインをなぞりそうな感じですね。
現在16巻で進行中の、竜馬暗殺阻止編まで一気にやっちゃうのかな?
(そしてそこがラスト?)
原作との相違点。
どちらが上とかじゃなくて、どちらにも好きなところがある感じです。
●仁がひげ面じゃない。
…ドラマから入った俺は大沢さんの仁も好きだけど、原作とはちょいとイメージ違いますね(笑)。
●仁の現代編にいろいろアレンジが。
…ドラマ版で現代にいる昏睡状態の婚約者。原作にはいないんですね。それに関連したトラウマ設定も、原作にはなし。
●その婚約者と花魁・野風が瓜二つ
…当然、この設定も原作にはなし。原作の野風がいいキャラだったのと、ヒロイン・咲がかわいいんで、この設定によってドラマ版がどうなるのか、仁と咲との関係がどうなっちゃうのか、ちょっと怖い。ドラマ版は野風に持ってかれそうだな‥
●仁がちょいと弱い。
…原作の仁は、歴史を変えることを恐れるよりももっと先に目の前の患者のために手が動いてしまう印象。悩んではいるけど、その悩みのために手を止めたシーンはないと思う。そこがカッコ良くて咲も惚れてくれたんだと思うから、ちょっと残念。ドラマ2話の、咲(綾瀬はるかさん)に叱咤されてやっと覚悟するシーンは、ドラマ界特有の「女性キャラを強くして活躍させる」シーンなのかなーと、ちょいとうんざり。相対的に仁のキャラが原作より情けなくなっちゃうし、あれで咲のキャラも、原作の濃やかな感じよりは少し無神経に見えちゃいますしね。
とは言え、主人公の「葛藤→決意」という流れは気持ちが盛り上がるので、ドラマ的にはこちらの方が燃えるのは確か。裏を返していえば、原作では「最初から揺らがない」ことによる物足りなさがあるのも確かですので。
ドラマ2話ラスト。上記のアレンジがあったからこそ盛り上がった。
僕の作り方の手法だと、ドラマ版に近そうです。
ああ、ドラマ版、盛り上げの演出センスは、シナリオ・絵作りともに好きだなあー。龍馬と緒方洪庵が隔離紐をくぐって入ってくるところの盛り上げ方なんか、大好き。(でもあれも、原作の咲が入ってくるところも健気で好きなんだけどなあー。)
●麻疹(はしか)と虎狼痢(コレラ)のエピソードを統合
連載漫画的な作りを、うまく1クールのドラマを踏まえたエピソードにアレンジしてると思います。
が、その流れで、麻疹になった咲を助けるシーンがなくなって残念…。あそこ萌えポイントなのに(笑)。
●龍馬と勝海舟の登場順番が逆
原作では勝と先に知り合って、龍馬とは勝に引き合わされるんですね。
しかし、ドラマ見て思ったんですが、やっぱり龍馬はどの作品見てもかっこいいし、頼りになるなあー(笑)。なんか、龍馬と出会ったら、「もう大丈夫だ!!」って気になっちゃうもん(笑)。
…と思ってたら、原作で、仁が「しまった、小説のイメージでついつい信用してしまった! 実際の龍馬がどんな人物かなんてわからないのに…」と言うセリフがあって笑いました。ドラマでも言って欲しいけど、もうかなり仲良くなっちゃったから今更かな。
●●●
原作では、この後、ますます幕末の医療史に食い込みます。
ペニシリンをどうやって作るかとか、どうやって大量生成するか、とか、どうやって安定して保存しておくか、とか。「輸血」をどうするか、とか。
こんなの、全部、「オーパーツ」。「この時代にあってはならないもの」。
麻疹、コレラ、梅毒、など、当時の脅威の病にうまく絡めてて、あえて幕末を舞台にタイムスリップさせた必然性がある。
本道(漢方)医学と蘭方(西洋)医学の確執とかにも絡んでくる。
当時、漢方は新興の西洋医学に押されていたわけだけど、主人公・仁の現代医学は、当然、当時の西洋医学よりもずっと上なわけだし。
ドラマ2話で綾瀬さん演じる咲が言った「目の前の苦しんでいる人を助けられないほどの事情とは、なんなのですか(目の前の人を救う以上の大切なことがありますか)」と言うことをそのまま突き詰めていくと、「もっと多くの人を救うには、もっと多くの人を救うには」となり、必然的に当時ではあり得ないほど医療史を進めていってしまうわけで。
原作でも、この先、日本の医学界のみならず、世界にもその影響は波及していく。その、「歴史を変えちゃってやばいんじゃないの」と言うざわざわ感は、ある意味「ジパング」以上。
また、当然のことながら、医者の中には、仁の未来医療技術のハイレベルさを肌でわかりながらも、自分たちの積み上げてきたものの価値を無にされかねないと恐れ、受け入れられない者もたくさんでてくる。
一方で、緒方洪庵や西洋医師ヘボンたちは、同じように仁を恐れつつも、正しさを認め、後押ししようと考えるんですね。幕府医学館の大物も、仁を潰しに来るかと思いきや、意外に理解があり、融合を図ろうとする。一見保守的権力者側の巨魁に見えても、ここまで来る人間は違うのかもなあ、と思った。大物だ。
「新しいものに対する怖れと拒否反応」も、「JIN」のテーマとも言えるかもしれません。
人間って保守的なものですからね。
新しいものをまず恐れ、目を塞いでしまう気持ちは分からなくもないです。
テレビ、漫画、ゲーム、ネット、ケータイ…各時代で、それぞれ、やり玉にあげられてきました。
「この頃の若い者は」と言う言葉は、古代エジプトの碑文からも確認されると言います。(…これは笑い話だったかな?(笑))
でも、それはもったいないと思う。
古い知識は尊重され、受け継がれ、敬意を抱かれるべきものですが、若い新しい発想(=未来の技術)も、同じだけ貴重な、学ぶべきものであるはず。
スケールの大きい仕事をする人は、「新しいもの」に目を塞がない柔軟性もまた、凄いのですよね。
また、仁の側も、古いものは無価値と断じるのではなく、たとえば当時西洋医学の波に押されて、現代医学ではすたれてしまった漢方(本草学)の方にこそ驚きを感じ、学ぼうとする。
原作の最新刊の段階では、その二つの道の統合こそ現代以上の医学の発展の予感がして、楽しみになってきています。
…発展が果たして幸せか、自然に帰ろう、と言う後ろ向きな議論も、最近では目につきますがねえ(苦笑)。そこでJINを見て、「目の前の理不尽な死から、目をそむけられますか?」と問いたい(笑)。その積み重ねこそが発展なんでしょ、と。そして現代の医療レベルを保つのにも、膨大なエネルギー消費が必要なんですよ、と。自然に帰ろう、と気楽に耳触りのいいこと言うけど、コレラで子供がバタバタ死ぬような江戸時代の文明レベルに戻れますか、と。ならばもっと未来を見て、新エネルギーなり宇宙進出なりのさらなる発展に希望を賭けなきゃあかんでしょう、と。…と、これは余談。)
●●●
自分はSF好き宇宙好きであるのと同時に歴史ファンでもあり、中でも幕末オタであります。司馬遼太郎はほぼ全部読んでるはず。漫画でも幕末ものは小山ゆう先生の「おーい!竜馬」をはじめ、そこそこ網羅してると思います。(今「ジキルとハイドと裁判員」と同じスペリオールで連載されている小山ゆう先生の「AZUMI」も、「おーい!竜馬」と同じ世界を舞台にした幕末篇であります。あの勝海舟も、すでに登場していますよね(笑)。)
また、現代劇の中では、「ブラックジャック」「振り返れば奴がいる」「医龍」など、生死にかかわるテーマの医療ものは、かなり好きな舞台です。
そんな僕にとって、この「JIN」は、かなりのヒット作品。今まで読んでなかったのが悔やまれますね(笑)。まだまだ面白いのを取りこぼしてるんだなあ。
「幕末×医療」モノでは、はずしちゃいけない名作があります。
手塚治虫先生の、「陽だまりの樹」です。
この作品も、主人公であり手塚治虫先生の曾祖父である手塚良庵とともに、緒方洪庵や福沢諭吉、村田蔵六(大村益次郎)など適塾の面々が登場し、幕末の動乱の中で牛痘の種痘所開設などに奮闘する姿が描かれています。「JIN」と同じく、色街も出てきます(笑)。
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ああー、「JIN」で手塚良庵出てこないかなあ(笑)。
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