「ポニョは子供のために作った」「一番楽しめるのは子供」「童心に帰って楽しんで」などのお言葉、評論などを読んで、俺は首をかしげる。子供はあれ面白いのか? 勿論凄い映画だとは…思うけど。
とりあえず劇場は満員だったのだが、子供向け映画などであるような、劇場の子供たちの笑い声が聞こえて、どよめいて、泣いて、みたいな反応はあまり感じられなかった。他の方の報告にあるように、食い入るように見入っていたといわれれば、そうなのかもしれないが。
対象年齢はいくつなのだろう。主人公の宗介が5歳なので、仮に5歳としてみる。
自分が5、6歳当時楽しんでいたものを、覚えている限り思い出してみる。以下、かなりだらだらと。
まず、強烈に記憶に残っているのが、「コン・バトラーV」を一話見逃しただけで、わんわん泣き喚いて親を困らせた事。ガルーダの正体なんてメチャクチャ心に残っている。「マジンガーZ」「グレートマジンガー」「グレンダイザー」「ダンガードA」「ボルテスV」「闘将ダイモス」このあたりのロボットアニメにはもう夢中で超合金とかも買ってもらっていたが、この頃確かまだ小学校には上がっていなかったと思う。ダンガードAは幼稚園の時のお弁当箱だったから間違いない。だから5歳以下。
あと「宇宙戦艦ヤマト」。多分再放送だったと思うんだが、これはもう大好きだった。ウチの親父がなかなかの海洋堂野郎で、先には厚紙を切り抜いて、後には発泡スチロールから削り出して、ヤマトの模型を作ってくれた。これで遊び倒した覚えがある。(親父はそれでも飽き足らなくて結局ヤマトのプラモ買って来て作ってくれたw) あと、「円卓の騎士物語・燃えろアーサー」。これも厚紙で仮面を作ってもらった。「ファーストガンダム」もこの頃だったらしいが、当時の自分にはさすがに難しかった。でも、アムロが敵を攻撃する時必殺技を叫ぶのではなく、「うわああああっ」と言うのは子供心に印象に残っていて、怖かった覚えがある。あと、ララァが熔けるのも怖かった。ガンプラは買ってもらいました。
あとタツノコシリーズ。「ヤッターマン」ですね。「豚もおだてりゃ木に登る」とか「ぽちッとな」とか「おしおきだべー」とか、ああいうアホらしいのも大好きなんですよね。子供。
本。子供用のでいろいろ買ってもらったが、「三じゅう士」「がんくつ王」「海底旅行(海底2万マイル)」「十五少年漂流記」「ロビンソン・クルーソー」「トム・ソーヤーの冒険」あたりが大好きで、もう繰り返し読んだ。ワクワクドキドキして、ページめくるのももどかしく、トリップして読んでたと思う。そして小1(6歳)の頃出会ったのが、ポプラ社の「アルセーヌ・ルパン」シリーズ。ちょっと難しかったが、それでも興奮して、むさぼるように読みましたよ。最初に買ってもらったのが「虎の牙」。連続毒殺魔事件。現場に残された虎の牙の歯型の残ったりんご。疑いをかけられるルパン。買ってもらった帰りに、靴屋で親が靴買っている横で周りも目に入らずに読み入ったのを思い出す。
「ドラえもん」も好きだった。が、普段の話より、一番好きだったのは「のび太の恐竜」「のび太の宇宙開拓史」。大冒険が好きだったんですね。それと実は、助けてもらえるというドラえもんより、自分がヒーローになれる「パーマン」が好きだった。ドラえもんの他に初めて買ってもらった漫画本が、たしかパーマンの3巻と、「バビル二世」の5巻。バビル二世がまた大好きだったな。同じ時期に好きだったアニメが「デビルマン」。(「あの」漫画版はさすがにもう少し大きくなってから。…と言っても小4(10歳)くらいか)
小1(6歳)の頃には「うる星やつら」がアニメになってた。1話。ラムちゃんのおっぱい。いや、子供だっておっぱい好きなんですってば!! 性的な意味で。 あと、同じくらいの時期にコロコロでやってた「おじゃまユーレイくん」と言うのが密かに好きだった気がする。子供心に、えっちな漫画だった。コロコロといえば「ゲームセンターあらし」。「炎のコマ」とか「剣の舞」とか「水魚のポーズ」とか真似したぜ。炎は出せないけど。
「サザエさん」などのいわゆるファミリー向けも見てはいたが、当時の自分の中で決して楽しみな部類じゃなかった。「他に見るものがないから、とりあえずアニメだから仕方なく見る」ってのが正直なところだった。「ハウス名作劇場」系も同様。今でこそクララが立ったところとかで号泣するが、これって大人の感覚では…。名劇系を本当に面白いと思いだしたのって、実は高校生あたりになって再放送を見てからだと思う。…あ、「トム・ソーヤー」と「フローネ」は子供の時から好きだった。トムは家出はするし、基地は作るし、殺人事件も目撃するからね。フローネは無人島漂流だ。…ファミリー向けと言われるほのぼの部類で掛け値なく好きだったのは「トムとジェリー」くらいかも。あと「ハクション大魔王」。
これは自分の5、6歳を思い出して列挙したのだが、どうだろう? (はっきり言って、今の好みと方向性は全く変わらん)
「刺激に慣れた子供たちは、ポニョよりポケモンの方が喜ぶだろう」との評があったが、後半は俺も同感。子供が面白い映画なら、ポケモンとかプリキュアとか、「新・のび太の恐竜」のDVDとかの方がオススメだと思う。
ってか、「刺激に慣れた子供」とか言うけど、今の子は…なんてニュアンスで言わなくても、30年近く前の自分を思い出してもこんなもんっスよ。…記憶の限り遡っても、「ポニョ」みたいなまったりしたのを楽しめる幼児期の俺なんて、想像できない。多分、人生の中でポニョを一番楽しめる俺は、深読みしたり宮崎監督の芸術性をぐちゃぐちゃ考えたりと嫌な楽しみ方をする、今の大人の俺。
マジメなオトナやお母さんたちが「子供に見せたい」「子供の為に」とか言うようなやつって、子供はたいていつまらない。子供はつねに、大人が見せたがらない、「ともだちんこ」とか「見れば~?」とか言う、「おぼっちゃまくん」や「クレヨンしんちゃん」を支持してきたはず。多分ずっとそうでしょう。じゃなきゃ、「戦隊モノ」とか、「ライダー」とか、「プリキュア」とか、「ポケモン」とか。
★★★
ポニョでの宗介の、ただ、舟を出してお母さんのところに行くと言う行動。魔王なんか倒さなくてもいい。天空の城なんかみつけなくてもいい。これが子供にとっては大冒険。子供がそれを成し遂げる。「その程度のこと」と言うなかれ。これが子供にとっては、ラストシーンで思いっきり抱きしめてあげたくなるほどの冒険なんだ。
…と言う、監督のスタンスは伝わってくる。
でもそれって、やはり上から目線、オトナ目線じゃないか。
子供を舐めてると思う。
5歳、6歳の時だって、剣戟や、銃撃戦や、ノーチラス号や、殺人事件や、恐竜や、そう言うまだ見ぬ冒険を潜り抜けるヒーローな自分を想像して、ワクワクするのが男の子だと思う。少なくとも俺はそういうのが好きだった。それ程ワンパクでもない、親の言うことを聞くいい子ちゃんだったと思うけどね。
俺としては、ポニョは子供向けとは思わない。
「単純に面白いです」と言う意味の面白さで言うと、足りない。
「子供にこういうのを見せたいと言う大人向け」だと俺は思う。
大人のエゴのようなものを感じる。それが悪いと言っているのではなくて、「そういうオトナ向けの映画」だと思う、と言う事。 或いは「大人の妄想する子供の無垢な気持ち」を味わいたいと言う、大人向け。
この映画に感じるのは、子供が楽しめる映画に必要な「子供との共犯意識」じゃなく、そういう「オトナの保護者目線」なんですよ。PTA臭と言うか。
奇しくもフジモトさんが言ってました。
「ずっと無垢のままならいいのに」
★★★
まあ、子供たちが楽しんでたんなら、上の文は全部見当違いと言う事で、別にいいんですけどね(笑)。俺が子供の頃から、人より殺伐とした、ファミリー向けを楽しめないワルガキのメンタリティーを持ってたってだけかもしれないから(笑)。
…でもなあ。そもそも、名劇の絵柄でその嫌なPTA臭を「ガーン」とぶっ壊してくれたのが「風の谷のナウシカ」だったんだけどなあ。あの衝撃は子供心に凄かったんだけどなあ。
逆に「トトロ」とか「名探偵ホームズ」とかは、劇場の子供たちも大笑いしたり盛り上がってたりしてたから、子供向けと言われてもわかるんだけどなあ。
うーんうーん。
ポニョが子供向けだと言われると否定的だけど、ひねくれたオトナとしては、「あれみんな死んでるのでは」などと深読みしたり、「あの波の表現が」とか「子供の目にはこう見えると言う事を表したのだ」とか、「鉛筆の柔らかい線が」とか、「動きすげええ」とか、こういう風にぐちゃぐちゃと作家性を語る材料として、非常に楽しめる映画です。
ここまで書いてみて、ハタと反省。俺の方が子供を舐めてる?
こういう風に大人の俺が感じた違和感、トリップ感。
それは、言葉にできなくても子供たちもトラウマのようにちゃんと印象に残るのでは?
俺が小1の頃、アムロの「うわあああ」が印象に残ったように。
「コン・バトラーV」のガルーダの正体がトラウマになったように。
先日のエントリーで書いた、「ちいさいモモちゃん」の悪夢っぽさが印象に残っているように。
ガキ真っ盛りの俺が、「ナウシカ」で衝撃受けたように。
…じゃあいいのか。
そうなると、冒頭で引用した他の方の報告、「子供たちが見入っていた」
これが重要になってきますねえ。
うん、ならいいんだ…。
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