♯歴史

今期ドラマ「JIN -仁-」

今期ドラマ、9時台の「JIN -仁-」「不毛地帯」。どちらも面白い。
「不毛地帯」については、余裕があったら後日。
今日は、「JIN」について。

TBS日曜劇場 「JIN -仁-」
http://www.tbs.co.jp/jin2009/

「JIN」は、原作は、古くは「六三四の剣」、ちょっと前だと「龍-RON-」で有名な大作家、村上もとか先生の作品。「龍-RON-」は全巻持ってます。

「JIN」も、今までもスーパージャンプの表紙で何度か見かけてて気になっていたのだが、ちょっとタイミングが合わず、手を出していなかった。表紙絵から、よくある普通の「江戸時代の赤ひげ先生」的な人情話を想像しちゃって、当時はそこまで食指が動かなかったんですよね。

ところが、今回ドラマを見てビックリ。
かわぐちかいじ先生「ジパング」のような、「現代医学+幕末」の、タイムスリップ歴史物だったとは。

ドラマの1話が面白かったんで、勢いで、漫画の方も全巻大人買いしちゃいました。もともと好きな作家様ですので。

原作も、期待に違わず面白かった!!!です。
またまた続きが楽しみな作品に出会ってしまった。
(知っておられる方も多い作品だと思うので、この言い方は恥ずかしいんですけどね(^^;))

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タイムスリップ歴史物、と言うのは、冒険物好きな要素を持つ中高生なら一度は妄想するような、ある意味陳腐と言われかねない設定。(実際、このドラマの紹介記事にも「一見荒唐無稽」と書かれててカチンときた(笑)。)

だけど、陳腐と言われるのは、逆にいうと王道で、かなりの人間が「そういうの読みたい」と思っている、魅力的な妄想ではあると思います。

だけど、生半可な作家が、「それによって何を描きたいのか」というビジョンもなく生半可な設定でやると、どうしても陳腐になってしまう。俺もやりたいけど、何かプラスアルファを思いつかない限り、難しいでしょう。(あ、もうすでに昔、「CLOCK CLOCK」と言う作品やってるんだけどね…(^^;)。)



それが。

かわぐちかいじ先生が「ジパング」を描き始められた時も思ったんですが、これほどの大人の大作家さまが、明確なテーマとビジョンを持ってその力量の粋をつぎ込んで正面から重厚に描かれると、なんと素晴らしく楽しめる作品になることか!

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さて、「JIN」。

上記のように、好きな漫画家様の作品にもかかわらず、今回、僕はドラマから入ってしまいました。
そして、幸運なことに、そのドラマの出来が素晴らしく、面白かった!

1話の、幕末にタイムスリップした直後の、道具もない中での脳外科手術のシーンの迫力は、原作を超えていたかもしれません。
ごめん、俺日本のドラマ舐めてました。今回凄い良かったです。

それは、演出の良さ、主役の南方仁を演じる大沢たかおさんの熱演もさることながら、なんと言っても患者(斬られた武士・橘恭太郎)の母親(橘栄)を演じた女優さん、麻生祐未さんの迫力がすさまじかったからだと思う。

「ひぃーっ、ひぃーっ」って言って。

そりゃ、得体のしれない男がノミ使って息子の脳天に穴開けてたら、そりゃそうなるわな(^^;)。コーン、コーン、って響く音の中で、そりゃ正気じゃいられない(笑)。必死で妨害しようとするのも当たり前。でもこっち(視聴者)からしたら、仁のやってることが唯一患者を救う手段なのもわかっているし、その手術の妨害が致命的になるのもわかる。でも、俺ら(現代人である視聴者)だって、医学には素人なんだから、こんな場面生で見たら絶対「ひぃーっひぃーっ」ってなるよ(笑)。なんという緊張感!

冒頭の現代劇のシーンやタイムスリップのシーンでは、正直そこまで引き込まれてはいなかったんです。

が、この脳外科手術のシーンで一気に引き込まれました。

幕末にある道具での手術の描写が重厚で、撮り方も良くて、説得力も、迫力もあった。
原作からのシナリオのアレンジ・再構成も良かったです。
仁に原作にはないトラウマを設定し、あの場面で気持ちが盛り上がるようになっている。

上記の変更点は若干主人公のキャラが変わってしまうので、仮に原作を先に知ってて、もとの仁のキャラを愛していたら、首をかしげる気分もあったかも知れないです。
でも、全11回で終わる1クールのドラマとライブ的な連載漫画とは作り方が違うわけだし、やはりドラマのシナリオとしての盛り上がり方が凄く良かったので、このアレンジはわかる気がします。

あと、龍馬がより副主人公格になってて、原作よりも濃厚に幕末史のメインをなぞりそうな感じですね。
現在16巻で進行中の、竜馬暗殺阻止編まで一気にやっちゃうのかな?
(そしてそこがラスト?)

原作との相違点。
どちらが上とかじゃなくて、どちらにも好きなところがある感じです。

●仁がひげ面じゃない。
 …ドラマから入った俺は大沢さんの仁も好きだけど、原作とはちょいとイメージ違いますね(笑)。

●仁の現代編にいろいろアレンジが。
 …ドラマ版で現代にいる昏睡状態の婚約者。原作にはいないんですね。それに関連したトラウマ設定も、原作にはなし。

●その婚約者と花魁・野風が瓜二つ
 …当然、この設定も原作にはなし。原作の野風がいいキャラだったのと、ヒロイン・咲がかわいいんで、この設定によってドラマ版がどうなるのか、仁と咲との関係がどうなっちゃうのか、ちょっと怖い。ドラマ版は野風に持ってかれそうだな‥

●仁がちょいと弱い。
 …原作の仁は、歴史を変えることを恐れるよりももっと先に目の前の患者のために手が動いてしまう印象。悩んではいるけど、その悩みのために手を止めたシーンはないと思う。そこがカッコ良くて咲も惚れてくれたんだと思うから、ちょっと残念。ドラマ2話の、咲(綾瀬はるかさん)に叱咤されてやっと覚悟するシーンは、ドラマ界特有の「女性キャラを強くして活躍させる」シーンなのかなーと、ちょいとうんざり。相対的に仁のキャラが原作より情けなくなっちゃうし、あれで咲のキャラも、原作の濃やかな感じよりは少し無神経に見えちゃいますしね。

とは言え、主人公の「葛藤→決意」という流れは気持ちが盛り上がるので、ドラマ的にはこちらの方が燃えるのは確か。裏を返していえば、原作では「最初から揺らがない」ことによる物足りなさがあるのも確かですので。

ドラマ2話ラスト。上記のアレンジがあったからこそ盛り上がった。
僕の作り方の手法だと、ドラマ版に近そうです。
ああ、ドラマ版、盛り上げの演出センスは、シナリオ・絵作りともに好きだなあー。龍馬と緒方洪庵が隔離紐をくぐって入ってくるところの盛り上げ方なんか、大好き。(でもあれも、原作の咲が入ってくるところも健気で好きなんだけどなあー。)

●麻疹(はしか)と虎狼痢(コレラ)のエピソードを統合
連載漫画的な作りを、うまく1クールのドラマを踏まえたエピソードにアレンジしてると思います。
が、その流れで、麻疹になった咲を助けるシーンがなくなって残念…。あそこ萌えポイントなのに(笑)。

●龍馬と勝海舟の登場順番が逆
原作では勝と先に知り合って、龍馬とは勝に引き合わされるんですね。
しかし、ドラマ見て思ったんですが、やっぱり龍馬はどの作品見てもかっこいいし、頼りになるなあー(笑)。なんか、龍馬と出会ったら、「もう大丈夫だ!!」って気になっちゃうもん(笑)。
…と思ってたら、原作で、仁が「しまった、小説のイメージでついつい信用してしまった! 実際の龍馬がどんな人物かなんてわからないのに…」と言うセリフがあって笑いました。ドラマでも言って欲しいけど、もうかなり仲良くなっちゃったから今更かな。

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原作では、この後、ますます幕末の医療史に食い込みます。

ペニシリンをどうやって作るかとか、どうやって大量生成するか、とか、どうやって安定して保存しておくか、とか。「輸血」をどうするか、とか。

こんなの、全部、「オーパーツ」。「この時代にあってはならないもの」。

麻疹、コレラ、梅毒、など、当時の脅威の病にうまく絡めてて、あえて幕末を舞台にタイムスリップさせた必然性がある。

本道(漢方)医学と蘭方(西洋)医学の確執とかにも絡んでくる。
当時、漢方は新興の西洋医学に押されていたわけだけど、主人公・仁の現代医学は、当然、当時の西洋医学よりもずっと上なわけだし。

ドラマ2話で綾瀬さん演じる咲が言った「目の前の苦しんでいる人を助けられないほどの事情とは、なんなのですか(目の前の人を救う以上の大切なことがありますか)」と言うことをそのまま突き詰めていくと、「もっと多くの人を救うには、もっと多くの人を救うには」となり、必然的に当時ではあり得ないほど医療史を進めていってしまうわけで。
原作でも、この先、日本の医学界のみならず、世界にもその影響は波及していく。その、「歴史を変えちゃってやばいんじゃないの」と言うざわざわ感は、ある意味「ジパング」以上。

また、当然のことながら、医者の中には、仁の未来医療技術のハイレベルさを肌でわかりながらも、自分たちの積み上げてきたものの価値を無にされかねないと恐れ、受け入れられない者もたくさんでてくる。

一方で、緒方洪庵や西洋医師ヘボンたちは、同じように仁を恐れつつも、正しさを認め、後押ししようと考えるんですね。幕府医学館の大物も、仁を潰しに来るかと思いきや、意外に理解があり、融合を図ろうとする。一見保守的権力者側の巨魁に見えても、ここまで来る人間は違うのかもなあ、と思った。大物だ。

「新しいものに対する怖れと拒否反応」も、「JIN」のテーマとも言えるかもしれません。

人間って保守的なものですからね。
新しいものをまず恐れ、目を塞いでしまう気持ちは分からなくもないです。
テレビ、漫画、ゲーム、ネット、ケータイ…各時代で、それぞれ、やり玉にあげられてきました。
「この頃の若い者は」と言う言葉は、古代エジプトの碑文からも確認されると言います。(…これは笑い話だったかな?(笑))

でも、それはもったいないと思う。
古い知識は尊重され、受け継がれ、敬意を抱かれるべきものですが、若い新しい発想(=未来の技術)も、同じだけ貴重な、学ぶべきものであるはず。

スケールの大きい仕事をする人は、「新しいもの」に目を塞がない柔軟性もまた、凄いのですよね。

また、仁の側も、古いものは無価値と断じるのではなく、たとえば当時西洋医学の波に押されて、現代医学ではすたれてしまった漢方(本草学)の方にこそ驚きを感じ、学ぼうとする。

原作の最新刊の段階では、その二つの道の統合こそ現代以上の医学の発展の予感がして、楽しみになってきています。

…発展が果たして幸せか、自然に帰ろう、と言う後ろ向きな議論も、最近では目につきますがねえ(苦笑)。そこでJINを見て、「目の前の理不尽な死から、目をそむけられますか?」と問いたい(笑)。その積み重ねこそが発展なんでしょ、と。そして現代の医療レベルを保つのにも、膨大なエネルギー消費が必要なんですよ、と。自然に帰ろう、と気楽に耳触りのいいこと言うけど、コレラで子供がバタバタ死ぬような江戸時代の文明レベルに戻れますか、と。ならばもっと未来を見て、新エネルギーなり宇宙進出なりのさらなる発展に希望を賭けなきゃあかんでしょう、と。…と、これは余談。)

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自分はSF好き宇宙好きであるのと同時に歴史ファンでもあり、中でも幕末オタであります。司馬遼太郎はほぼ全部読んでるはず。漫画でも幕末ものは小山ゆう先生「おーい!竜馬」をはじめ、そこそこ網羅してると思います。(今「ジキルとハイドと裁判員」と同じスペリオールで連載されている小山ゆう先生の「AZUMI」も、「おーい!竜馬」と同じ世界を舞台にした幕末篇であります。あの勝海舟も、すでに登場していますよね(笑)。)

また、現代劇の中では、「ブラックジャック」「振り返れば奴がいる」「医龍」など、生死にかかわるテーマの医療ものは、かなり好きな舞台です。

そんな僕にとって、この「JIN」は、かなりのヒット作品。今まで読んでなかったのが悔やまれますね(笑)。まだまだ面白いのを取りこぼしてるんだなあ。

「幕末×医療」モノでは、はずしちゃいけない名作があります。

手塚治虫先生の、「陽だまりの樹」です。

この作品も、主人公であり手塚治虫先生の曾祖父である手塚良庵とともに、緒方洪庵福沢諭吉村田蔵六(大村益次郎)など適塾の面々が登場し、幕末の動乱の中で牛痘の種痘所開設などに奮闘する姿が描かれています。「JIN」と同じく、色街も出てきます(笑)。

「JIN」で、幕末医療に興味をもたれた方がいらっしゃったら、こちらもぜひどうぞ。

ああー、「JIN」で手塚良庵出てこないかなあ(笑)。

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うおっユニコーンにカプールが!

今月のガンダムエース見た?

なんか、ユニコーンカプールが登場してる!!!

虎哉先生も挿絵に描いてくださってるし!!!

あとガルスJならぬガルスKだとか、

そしてなんとガンキャノンディテクターも登場しとる。

あれってもしかして幻陽でスパルナ隊にあった奴と同一機体なのかな?かな?(確か1機か2機しかなかったはず)

ほら~ZZネタってユニコーンと親和性高いんだからさ~。そこ推さなきゃ~(笑)。と言うかありがとうございます福井先生、虎哉先生(笑)。

それはそうと今月号に幻陽のコミックスの広告、載ってた? なくない?

ほ、ホントに出るんだよね…((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル

オリジンはとうとうテキサスコロニーのシーン終了。ブライトの盗聴なくなってたなあw 好きだったのに。変わりにカイが探偵さんに。「兄は鬼子です!」とか「ええ、ええジオンの子です」とかも無くなってたなー。密室でブライトとふたりっきりで尋問でもなくなってた。でもこちらのほうが自然か・・。金塊もここじゃなかったっけ!? 金塊!金塊!ホワイトベースの皆さんで分けてください!

シャアの行動原理が非常にわかりやすくなってた。面白かった。でも、わかりやすくなりすぎなのも良し悪しかも…。読者に委ねる事も必要だと思うんだけど、このへんのバランスは未だに正解がわからない。と言うか正解はないんでしょう。計算の及ばない神の領域なのかも。

アムロとの因縁が強化されてたような感じがして、そこは燃えた。そういえば、ガッツリと「シャアが勝った」のって、アニメも含めて実は初めてじゃない!!? 劇場版の学徒動員の印象が強いせいもあって、ゲルググって性能を発揮できないまま活躍し切れなかった不運のMS、と言う印象が強いのだが、オリジンのここ数回の活躍は、「ゲルググ強ええーーっ!!」と高揚するに十分! エネルギー切れのきらいがあったとは言え、なんたってこの段階のバケモノ級のアムロ&ガンダムを、ガチで超えちゃったんだから。

今回のシーン、テキサスでのエドワウ・セイラ編を踏まえてるだけあって、セイラさんのセリフはかなりのところオリジンでの独自セリフ。

だがそれでも頭の中ではハッキリと井上 瑤さんの声で響いてくる。この耳で聞いてると同じくらい確かに。

…でも、もうそれが現実に叶う事はないんだな。涙。

次回からはソロモン編。スレッガーさんが悲しいけれど、これ戦争なのよねだったり、ドズル兄さんがやらせはしなかったり、いよいよエルメスのララァが「ら・ら~」きゅいーんで、大佐ダメです!アムロが取り返しのつかない事をしちゃったり、ああもう盛りだくさん、名シーン目白押しだなあ。やっぱ名作ですよ、ファーストガンダムは!

あと、今月のアフタヌーン。

「きみがエウメネスか! 私はアレクサンドロス!」

ついに、ついにヒストリエに獅子王キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!

アレク結構いい子じゃん。なんかカワイイぞ(笑)。きゅん。

しかし「アレクサンドロスの秘書官エウメネスの生涯!」って煽りで始まったこの漫画。でもここまでの道のりは長かった…。何年かかった?(笑) アレクようやく登場したとは言え、未だミエザの学校にも入っていない、子供時代。東征、ましてやディアドコイまで何十年かかることやら(笑)。読む方もライフワーク。

でもいいんです、そんなのがなんにもないここまでの段階でも、圧倒的に面白い。

つまり、「歴史の知識や興味が全くなくて読んでも、漫画として面白い作品ということ」。

こうじゃなきゃね。こうじゃなきゃ。

憧れます。こうじゃなきゃ…。

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『柳生非情剣 SAMON』後編第1話掲載コミックバンチ発売中!

告知が遅れちゃいましたが、田畑由秋先生・余湖裕輝先生隆慶一郎先生の原作に挑む『柳生非情剣 SAMON』 完結編第1話が掲載されているコミックバンチが、この金曜日から発売中!!! です! 僕もほんのちょっとだけお手伝いさせていただきました!

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一応師匠のだから絵載せても大丈夫かな バンチの表紙はまずいかもだけど…

前回(中篇)の展開を受けて、巻頭カラー・見開きでガチホ○です!(笑) あんなに正面から描くとは思わなかった。びびった(笑)。まあ、当時はかなりみんなバイだったらしいですからね。織田信長と前田利家なんか有名。腐女子の方は喜ぶのかなあ? こう真正面からだと引くのかなあ? でもこの作品の場合、前編・中編の心情描写が巧みだったので、性的な意味では共感できないまでもこのふたりの心情はわかる気がするですよ。

びびっている間もなくページをめくると、そのツカミを受けての柳生宗矩の憤りで、もうグッと内容に引き込まれます!!! 直接読んで欲しいのでここには書きませんが、あるキーワードを軸に盛り上がる盛り上がる!!! と言うか、正直爆笑!

燃え&笑い&精力的なじじい、と言う組み合わせに、アクメツを思い出しちゃったり。(ウルフガイがかなり真面目路線だから、あのノリ懐かしかったですよ(笑))

そして柳生十兵衛!!! 役柄的には敵役になるんですが…

余湖さんの描く十兵衛、かか、かっけ――!!!!

そして歴史オタ・剣豪オタは注目!

柳生石舟斎キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!

柳生兵庫助キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!

そう、バガボンドでもお馴染みのあのお二人です!

このシークエンスがまた、柳生宗矩の気持ちが描かれてぐっと来ます。(しかし宗矩も、あずみでも大きな敵役を演じたり、大変だなー(笑)。) 「数々の歴史漫画での名悪役」の内面って感じでよかったっす。

と言うわけで、これ以上言うのは野暮ですな。ちょっと告知遅れちゃったけど、まだまだコンビニにあると思いますので、是非手にとって読んでみて下さい。後編第一話ですけど、前編・中編を読んでなくても入れると思います。 

バガボンドといえば、バンチの前日の木曜日に出たモーニングで表紙飾ってましたね。 「先週休載してゴメンね!」って感じの武蔵の笑顔に、和んだ(笑)。

それで、凄いタイミングなんですが、今週のバガボンドにも超久しぶりに柳生の庄、そして柳生兵庫助登場してました! おおぅ、凄い偶然! コラボだ!!!

ってわけで、バガボンド読者の方も、バンチを手にとってSAMONも是非読んでみて下さい。

しかしちょっと前のエントリーで、「なんだか『バガボンド』『へうげもの』『あずみ』『シグルイ』『SAMON』とか集めていったら『戦国エース』と言う雑誌が出来そうだ」と書いたのですが、戦国と言うよりどちらかと言うと桃山時代~江戸初期ですな。

桃山時代… えーと、つまり… 『エース桃組』

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この辺がマニアック

「バガボンド」に出てくる、武蔵にも多大な影響を与えた刀鍛冶師・本阿弥光悦は、茶人としては、「へうげもの」の主人公・古田織部の後年の弟子らしい。

うおおおお、同じモーニングでリンクしとる!

こういうリンクに萌えてしまうのが俺の歴史好きとしてのマニアック気質なところ。ゲヒヒヒ

千利休 (秀吉の筆頭茶人。わび茶の完成者。茶聖)

古田織部 (利休七哲のひとり。「織部焼」創始者。桃山時代において「織部好み」と呼ばれる一大流行をもたらす)

本阿弥光悦 (書家・芸術家・茶人。「寛永の三筆」の一人。)

と言うライン。

自分「へうげもの」が始まった頃は主人公の古田左介が有名な「織部焼」の古田織部だとは知らなくて、信長の死、秀吉の天下取りに伴って「織部」の官位を賜った時に「うおおおお!そうだったのか!」と思ったもんです。しかし知らなくても現代人が「数寄」に興味もてる作りにしてるのが、漫画として凄まじく上手いところ。数寄者たちの感覚はオタクなら共感できるところ大だと思います。と言うか数寄者同士の会話はオタクの会話そのもの(笑)。「九十九茄子茶入のこの釉薬の流れ方が」とか「この八角茶釜のがにっとした形が…」とか、固有名詞を「リボルテックの可動域が」とか「S.I.C.のこのぎゅおんっとしたアレンジが」とかに変えるとまんまw。「侘び」「寂び」「萌え」とはよく言ったものです(笑)。

ただ、数寄者たちの多くは一方で戦国の武人たちでもあります。「へうげもの」の作者山田芳裕先生のお言葉ですが、「一ミリほどの色の変化がわかる趣味人にして死ぬまでぶつかり合う武人」、凄まじいと思います。

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橘樹神社例大祭だそうです

昨日からなんかすぐ近所でお祭りしてる…窓からお神輿が見えます。ぴーひゃらぴーひゃらわっしょいわっしょい。 シーシッシッシッシッシッ ラーセッセ ラッセッセ♪ 

ホワイトドールの御加護の元に♪

この街には10年住んでるんだけど、商店街のすぐ近くに仕事場移したのは「紡血」の連載始まってからでして、以前の仕事場では祭りやってるの気がつかなかった。お祭りなんぞ意識するのは久しぶり。昨日夕飯食いに行く時にちょっと覗いたけど、屋台とか呼んで結構頑張ってるみたいです。

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あいにくの小雨だったけど、にもかかわらずそこそこ人はいました。

今朝は雷凄かったけど、今は晴れてるんで今日もやってるみたい。ちょいと明日までに仕上げなきゃいけない仕事があるんで今日は机の前離れられないんだけど、飯に行く時にでもまたちょっと覗いてみようかな。

橘樹神社

元は牛頭天王社と言ったそうで、この街の名前「天王町」の由来だそうです。

ちなみにこのあたりは旧東海道保土ヶ谷宿の真っ只中らしくて、天王町駅前に安藤(歌川)広重の「東海道五十三次保土ヶ谷宿」のモデルとなった「帷子橋(新町橋)」のモニュメントがあります。(河川改修工事により現在の帷子橋は位置が変わってます)

Hodogaya

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10年住んでて、最近までその事知らなかった…歴史好きの癖に…__| ̄|○

保土ヶ谷って、ドカベンの神奈川県大会の試合を最も多くやった「保土ヶ谷球場」がある事と、眞鍋かをりさんが大学時代住んでいた街ということしか意識してなかったよ…。

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歴史漫画・歴史小説 (日本編) ver.1.0

自分が読んで印象に残った歴史漫画・歴史小説を年代順に並べてみる。コメントは主に歴史ものとしての観点から。今回は日本編。新しいものを読んだり、書きたい事が増えたりしたらバージョンアップしていくかも。本文が抜けてるところはきっちり埋めて完成させたいなあ。

★縄文時代 1万年前頃~

●ドラえもん のび太の日本誕生(藤子F不二雄)
のび太の日本誕生

★弥生時代 前5世紀頃~

●三界のスサ(王欣太)
天界の快男児スサノオが地獄見物に出かけ大暴れ。その彼が閻魔大王の誕生に立会い、恐れを知り、地上界に落とされると言う19ページのショートストーリー。欣太先生の圧倒的イメージ力と思考の虚を衝かれるような閻魔大王・アマテラスのキャラデザが魅力的。
MANDALA Vol.1 (2007) (1)

●火の鳥 黎明編(手塚治虫)
邪馬台国女王・卑弥呼の熊襲侵略と、イザナギの尊を思わせる主人公ナギ、猿田日子伝説、ニニギの尊の天孫降臨伝説などを効果的に絡めてある名作。特に「日食=天の岩戸隠れ」で暗示した「卑弥呼=天照大神」はいい。(実際卑弥呼の没年あたりに皆既日食が起きているらしい。)卑弥呼の下で政治を司っていたという弟も、スサノオに重ねられている。
火の鳥 (1)

★古墳時代 3世紀末~

●ナムジ(安彦良和)

●神武(安彦良和)

●火の鳥 ヤマト編(手塚治虫)
日本武尊の熊襲平定に絡めた作品。主人公オグナは作中でヤマトタケルとなる。古墳や埴輪、それに石舞台式古墳も絡めてある。
火の鳥 (3)

★飛鳥時代 6世紀末~

●火の鳥 太陽編(手塚治虫)
太陽編は過去と未来が交錯する異色作だが、そのうちの過去編が大化の改新後、壬申の乱が舞台。天智天皇、藤原鎌足、大海人皇子、大友皇子等が登場する。また、火の鳥を通して好意的に描かれてきた仏教が、大陸からの「侵略宗教」として否定的に描かれているのがめずらしい。大海人皇子(天武天皇)が日本史離れした異形な英雄の印象を残すのも、歴史ファン的にはニヤリとする所。
火の鳥 (10)

★奈良時代 710~

●火の鳥 鳳凰編(手塚治虫)
火の鳥の中でも一、二を争う名作だと思う。歴史的には、大仏建立に大きく絡む。橘諸兄や吉備真備が重要人物として登場。御簾の中の帝は恐らく聖武天皇。盧舎那仏建立に尽力した良弁僧正(東大寺初代別当)が、主人公我王の師匠に。また、もう一人の主人公・茜丸は、遣唐使になって唐に渡る事を願う。
火の鳥 (4)

★平安時代 794~

●新平家物語(吉川英治)

●義経(司馬遼太郎)
義経の軍事的天才っぷりと、政治的或いは社会人的痴呆っぷりに焦点をあてた作品。天才とは一方において欠けたる者だという、ひとつの典型的な例。この義経、映画「アマデウス」におけるモーツァルトと印象が近い。日本人のいわゆる「判官贔屓」に冷水を浴びせるような作品で当時非難轟々だったらしいが、このダメッぷりを含めて天才の魅力だと思う。ただテーマを描ききったとは言え、勧進帳や平泉での最期まで書いて欲しかった。ちょっとラストが欲求不満。
義経〈上〉

●ますらお~秘本義経記~(北崎拓)
これも義経主人公。少年サンデー連載。司馬義経を踏まえてか、ヒーロー牛若丸ではなく、捨てられた怨念にどろどろ歪んだ「遮那王」としてスタートした。(ちなみに自分は遮那王という名前はこれで知った。)いつもの北崎絵じゃなく、歴史ものを意識したなかなか重厚な絵・描写で最初は良かったのだが、やはり人気が取れなかったのか、路線変更→打ち切りのコンボに。伊勢三郎や平維盛の描写、「クソガキ牛若vsいい人弁慶」の五条の橋対決など、結構好きだったのだが…。展開がどんどん駆け足になる上平家滅亡まで行かなかった。人事ながら、やはり少年誌で自分の好む歴史物は無理かと、ちょっとしたトラウマに。
秘本義経記―ますらお (1)

●火の鳥 乱世編(手塚治虫)
これも義経はクソガキ。…を通り越して悪役。が、上作品からのイメージにも合致。ちなみに弁慶ならぬ弁太が主人公。さらわれた恋人・おぶうを求めて旅立つ。平清盛が裏主人公と言うべき位置で、孤独な権力者の老人を演じている。清盛とおぶうの交情が味わい深いが、彼女を取られた弁太の気持ちで読むと切ない。ちなみに義経を育てた鞍馬天狗は、火の鳥鳳凰編の主人公・我王。長生きしすぎ!(笑)
火の鳥 (7)

★鎌倉時代 1192頃~

●源平討魔伝(ナムコ)
高校時代はまった。曲がったままの勾玉。諸行無常よのう!これもアマデウス義経が基地外で素敵。「ヒョッヒョッヒョッヒョッ。」ほとんどの登場人物が怨霊。時代的には恐らく幕府成立以降なんでここに置いた。主人公は「ぷれいや」という異次元の者のお布施で蘇った、平景清の怨霊。歌舞伎や浄瑠璃の演目「出世景清」からの出展らしい。ラスボスは源頼朝。
ナムコミュージアム Vol.4 PlayStation the Best

★南北朝時代 1331頃~

●私本太平記(吉川英治)
足利尊氏、悪人には描かれてないのだが、英雄としてはなんとも歯切れが悪い。むしろ、いい人、凡人過ぎてビジョンがないというか、流されっぱなしと言うか。この時代は楠正成に感動して見るべきなのだろうが、滅びの美学と言うのはどうも…。司馬遼太郎はエッセイで、「この時代は皇国史観のロマンを廃して見るとただの土地問題でしかなく、実態は面白味のない時代」と評していた。自分としては後醍醐天皇など描き方によってはなかなか面白い基地外キャラ(誉め言葉)になりそうだと思うのだが…確かに惚れられる英雄はいないかも。
私本太平記〈1〉

★室町時代 1338頃~

●一休さん(東映動画)
初期は意外にシリアスで、ちゃんと歴史物してて侮れない。南北朝の動乱の残照。後小松天皇の庶子である、一休。南朝再興を狙い、一休を錦の御旗にしようとする、新田家ゆかりの武士の子、哲斉。将軍足利義満の命で一休を監視する寺社奉行蜷川新右衛門。新右衛門さん最初は怖い。ただし、風俗描写の考証は甘いらしい。でも金閣寺はこれで知った。これだけ見てると義満はダメ将軍みたいだが、実際は南北朝を統一し天皇の座すら狙った、日本史上の怪物。ちなみに金閣寺に住んでた時点では義満は出家して僧形なので、アニメのように髷を結った義満が金閣寺に住んでいたと言うことはないと考えられる。
一休さん~母上さまシリーズ~第1巻

★戦国時代 1493頃~

●火の鳥 異形編(手塚治虫)
不老不死の八百比丘尼伝説に絡めた小編。無間地獄のおっそろしい話だった。鳥獣戯画のルーツにも繋げている。(ただし鳥獣戯画は平安末期~鎌倉初期の作と見られているので、時代は少々合わない。)ちなみに話は「太陽編」とリンク。
火の鳥 (3)

●剣の舞(岩明均)
新陰流開祖・上泉伊勢守信綱の弟子、疋田文五郎を主人公にした中篇。「バガボンド」で若き日の柳生宗厳が負けた相手はこの信綱と文五郎であり、同じ場面がこの作品でも語られている。信綱の竹刀開発にも触れられていて嬉しい。
雪の峠・剣の舞

●国盗り物語(司馬遼太郎)
斉藤道三カッコイイ。神出鬼没、一人二役、お前はアルセーヌ・ルパンか! 素寒貧の破戒僧から油売りの大商人、一国の家老、そして大名へ。これぞ下克上。しかしさすがの道三も徒手空拳からではここまでが精一杯だった。道三は天下統一の覇業を信長に託す。後半は織田信長と明智光秀が主人公。最近では道三の事跡は親子二代だとする説もあるらしいが、だとすると少し寂しい。
国盗り物語〈1〉斎藤道三〈前編〉

●猛き黄金の国(本宮ひろ志)
これも斉藤道三主人公。ほぼ「国盗り物語」をベースに作ってあるようだ。
猛き黄金の国斎藤道三 (1)

●天と地と(角川)

●信長(池上遼一)
池上先生の信長。大河物と言うより、信長にまつわるオムニバス連作短編集という趣。個人的には、少々信長がおとなし過ぎだと思う。
信長 1 黎明の巻 (1)

●ムカデ戦旗(森秀樹)
武田の金掘り衆と、その頭目ムカデが主人公。金掘りの技を駆使して戦国を生き抜く。信玄の弟、武田信廉がムカデのよき理解者となる。信長、木下籐吉郎(秀吉)、家康なども登場する。
ムカデ戦旗 1 (1)

●戦国子守唄(森秀樹)
浅井長政の遺児を匿う羽目になった、羽柴秀吉配下の雑兵三人が主人公の小編。秀吉を、信長への忠義と人としての優しさの狭間で苦悩する男に描いている。秀吉の相方として竹中半兵衛も登場。
新・子連れ狼 1 (1)

●信長の野望(光栄)
ゲームそのものは少ししかやってないが、武将ファイルは暇つぶしによく読んだ。
信長の野望 天下創世 武将ファイル

●戦国無双(光栄)
無双は面白い。歴史に興味のない人にも入口になっているようで、いい事だ。キャラデザも、華がありながら骨太感もあって、優れていると思う。
戦国無双2(通常版)

★安土桃山時代 1573頃~

●夢幻の如く(本宮ひろ志)
本能寺で信長が死なず、世界に乗り出すIF物。むしろ世界史か。IF物は比較的興味はないのだが、これは同時代の世界史英雄オールスターと言う感じで楽しく読めた。「ヌルハチ~? 妙な名じゃのう!」
夢幻の如く 1 魔王復活編 (1)

●新史太閤記(司馬遼太郎)
一介の農民から信長の武将を経て、事実上の天下人まで上り詰めるのし上がり物。とにかく秀吉の前半生は絵に描いたような出世話なので、どうやったって面白い。司馬秀吉は明るくスカッとした好人物。だからこそ、家康との対決である小牧・長久手の戦いで終了してしまうのが残念。天下人になった後の後半生の解釈もじっくり読みたかった。
新史太閤記 (上巻)

●覇王の家(司馬遼太郎)
家康そのものを描く、と言うよりも、三河武士団と言うものを書いた作品。太閤記に比べて重い。重苦しいよ三河武士。これもなぜか、秀吉との対決である小牧・長久手の戦いまで。覇業の行く末は「関が原」そして「城塞」で、と言う事だろう。
覇王の家〈上〉

●へうげもの(山田芳弘)連載中!
これに出て来る信長が一番カッコイイ!! 死に様はビックリした。茶器・名物や物欲などを通し「文化」にスポットを当てた、一風変わった戦国物。名物を愛でるシーンは、オタク的にはなかなか共感できるものがある。「これを「渋い」と呼びましょう」には痺れた。主人公は古田左介(織部)。作中で千利休の弟子となる。
へうげもの 1 (1)

●一夢庵風流紀(隆慶一郎)
前田利家の従兄弟、「傾奇者」前田慶次郎利益が主人公。

●花の慶次(隆慶一郎 原哲夫)
一夢庵風流紀の漫画化。慶次、強!これで慶次が一躍メジャーに。秀吉がなかなか味のある怖さを出していて魅力的。朝鮮出兵が琉球出兵になっている。なんじゃそりゃ。
花の慶次 1 (1)

●功名が辻(司馬遼太郎)
大河ドラマヒットしましたね。大河で女性が大活躍するのは最近の傾向ではあるが、内助の功ネタがここまで好意的に受け入れられると言うのは、また若干時代が変わってきたんだなとも思える。幕末ファン的には、進駐軍として長宗我部氏を追い出して山内氏が高知に入った事が、幕末の土佐上士(山内侍)と土佐郷士(長宗我部侍)の確執、土佐勤王党の悲劇に繋がっていくわけで、その辺の種として面白い。

功名が辻〈1〉

●関が原(司馬遼太郎)
関が原前夜の政治的工作が面白い。勝つ者は勝つべくして勝つ。反面、西軍の石田三成や島左近の魅力も発見できる。幕末好きとしてはやはり、この時の各大名の運命が幕末の各藩の姿勢に繋がる所が興味深い。
関ヶ原〈上〉

●雪の峠(岩明均)
後の秋田市である。
雪の峠・剣の舞

●影武者徳川家康(隆慶一郎)
関が原以前と以後の家康の性格の変貌や、豊臣家に対する態度の不可解さ、秀忠との確執などにある一定の回答が与えられるのが面白い。歴史上の異説・珍説ネタは、「でも、ひょっとしたらこうだったかも…」と思わせるだけの説得力があると、抜群に面白い。
影武者徳川家康〈上〉

●宮本武蔵(吉川英治)
言わずと知れた国民小説、宮本武蔵。でも実はまだちゃんと読んでない。バガボンドの原作。が、かなりアレンジされているはず。
宮本武蔵〈1〉

●バガボンド(井上雄彦)連載中!
やはり武蔵編は燃える。殷瞬編と吉岡道場絡みは神。井上先生は凄い。佐々木小次郎が聾者に設定されてビックリ。小次郎編にも力が入っている。実在の有名登場人物としては、柳生石舟斎、柳生兵庫助、上泉信綱、伊藤一刀斎など剣豪剣聖系目白押し。勿論沢庵和尚、本阿弥光悦も登場する。ちなみに伊藤一刀斎の起こした一刀流は、後に坂本龍馬が学んだ北辰一刀流の源。
バガボンド―原作吉川英治「宮本武蔵」より (1)

●あずみ(小山ゆう)連載中!
子供のときから一緒に育った仲間同士で殺し合わされる、衝撃のオープニング。あずみたちは、家康の懐刀・南光坊天海の命を受けて小幡月斎が育てあげた、徳川の世を安定させるために反乱分子を殺してゆく「枝斬り」の戦士。浅野長政、真田昌幸、加藤清正、家康、伊達政宗…この時期に死ぬ有名な人は、みんなあずみが殺しちゃった。前半は大阪の陣など歴史的大事件とも深く絡んで文句なく面白いが、長く続きすぎて少々終わりどころが見えない。
あずみ (1)

●城塞(司馬遼太郎)
大阪冬の陣夏の陣、豊臣の滅亡を描いた名作。真田昌幸・幸村父子や塙団右衛門ら浪人たちと大野治長ら幹部との機微、人間模様が面白い。でも淀殿の下では絶対死にたくないと思った。秀頼はそれ程悪く描かれていない。
城塞 (上巻)

●時の行者(横山光輝)
タイムスリップSF。でも主人公の未来人「行者」はあくまで傍観者であって、話自体をほとんど動かさない。事実上歴史の断片を扱ったオムニバス読切だと思う。時代は籐吉郎秀吉の若い頃あたりから江戸初期あたりまで。
時の行者 (上)

★江戸時代 1603~

●新・子連れ狼(小池一夫 森秀樹)
元祖「子連れ狼」は原作の漫画も時代劇もほとんど見たことないのだが、森秀樹先生のファンなので続編から読み始めてしまった。公儀介錯人・拝一刀の遺児大五郎は、薩摩藩士東郷重位に拾われる。東郷重位は、「ちぇすとおおおお!」の掛け声で有名な示現流の開祖。
新・子連れ狼 1 (1)

●大奥(ドラマ)

●捨て童子松平忠輝(隆慶一郎 横山光輝)

●シグルイ(南條範夫 山口貴由)
むーざんむざん。
シグルイ 1 (1)

●水戸黄門(ドラマ)
幕末好き的には、水戸黄門(徳川光圀)といえば「大日本史」の編纂、そして水戸学。「水戸黄門」で触れられてるかは知らない。ワンパターンは好きではないので、実は時代劇ってあまり見たことはない。エンターテイメントの美しい黄金率なのは頭ではわかるのだが…っと、それは余談。
水戸黄門名作選 その1

●吉宗評判記 暴れん坊将軍(ドラマ)
米政策や目安箱と絡めたり、大岡越前も出てきたり、支配者の責務が語られたり、第一シリーズは案外侮れなかった。話としてもまだパターン化されていなくて面白く、最近見る目が変わった。シリーズが続くにつれてパターン化していくのは一休さんやタイムボカンと一緒か。
吉宗評判記 暴れん坊将軍 第一部 傑作選 VOL.1

★幕末 1853~

●世に棲む日日(司馬遼太郎)
前半が吉田松陰、後半が高杉晋作が主人公。長州松下村塾の系譜。革命とは、まず思想家が現れ、行動家が激発し、実務家が形にする。長州における思想家が吉田松陰、行動家が高杉晋作。(ちなみに実務家が「花神」の主人公、大村益次郎と言う事らしい。その後に処理家…として伊藤博文あたりが来るのだろうか)
世に棲む日日〈1〉

●竜馬がゆく(司馬遼太郎)
坂本龍馬を日本史上の一大ヒーローに押し上げた名作。実に、実に面白い。黒船来航から大政奉還まで時系列順に一通り押さえてあり、また、竜馬の事跡の特異性から、土佐、長州、薩摩、幕府要人に至るまで当時の各勢力のビッグネームがほとんどオールキャストで絡んでくる。
土佐…武市半平太、岡田以蔵、中岡慎太郎、後藤象二郎、乾(板垣)退助
長州…桂小五郎、高杉晋作、久坂玄瑞、伊藤俊輔(博文)、井上聞太(薫)
薩摩…西郷吉之助(隆盛)、大久保一蔵(利通)、小松帯刀
幕臣、大名…勝海舟、松平春嶽、山内容堂、大久保一翁、永井尚志
…と、メインだけでもキリがない。幕末の入門に最適。
竜馬がゆく〈1〉

●おーい竜馬(武田鉄也 小山ゆう)
ベースは「竜馬がゆく」だが、それに加えて竜馬と武市、以蔵の3人を幼馴染に設定した事によって非常に味わい深くなっている。(さらに言うと、容堂、乾(板垣)、後藤との因縁も効果的。)竜馬が上海行しちゃったりなど結構ハチャメチャな事もやってヒヤヒヤしたが、それも上手く時代(アジアの危機)を理解するための必要な要素として機能しており、意外なほど押さえる所押さえている。なにより誕生から竜馬暗殺まで余す所なく描ききられている。よくぞ!よくぞ描ききって下さった!小山先生、当時のヤングサンデー、ブラボー!
お~い!竜馬 (第1巻)

●せごどん(道明)連載中!
西郷隆盛が主人公。現在イブニングで連載中。ようやく島津斉彬の元で働き始めた所。このあいだジョン・万次郎が出てきた。今後を楽しみにしているのだが、今の所まだ吉之助(西郷)が典型的な少年誌主人公の域を脱していない所と、相棒の大久保一蔵(利通)が少々小人物過ぎる所が不満。だがまだなにせ二人とも少年期を脱した所。今後の成長に期待だ。竜馬とはまた違う、「西郷ならでは」の不思議な魅力を知りたい。
せごどん 1 (1)

●はっぴいマン~爆裂怒濤の桂小五郎(石渡治)
長州の桂小五郎(木戸孝允)を主人公にした漫画。桂と竜馬、新撰組の沖田総司、それに新撰組を抱えた京都守護職・松平容保公に幼馴染的な因縁を与えている。千葉道場のさな子さんが竜馬に振られたショックで人斬りさな子さんになり、体を使って長州志士を篭絡して蛤御門の変の黒幕になっていたのが印象的(笑)。
HAPPY MAN 第一幕 (1)

●陽だまりの樹(手塚治虫)
手塚治虫の曾祖父・蘭方医手塚良庵と武士伊武谷万二郎を主人公に、幕末を描く。蘭方医が主人公だけに適塾が主要舞台の一つで、先生の緒方洪庵や福沢諭吉、医学生時代の村田蔵六、種痘所の設立等、ちょっと変わった所にスポットが当たる。また、ハリスの通訳ヒュースケンの殺害事件も重要なエピソードとなっている。勝海舟、山岡鉄舟、橋本左内、西郷、竜馬なども登場。
陽だまりの樹 (1)

●燃えよ剣(司馬遼太郎)
新撰組副長土方歳三を主人公に、幕末から戊辰戦争、五稜郭までを佐幕側から描く。「竜馬がゆく」を初めとする薩長側からの作品とは表裏の関係にあたる、名作。新撰組が舞台だけに、局長近藤勇、沖田、斉藤一、芹沢鴨…など勿論登場。
燃えよ剣 (上巻)

●新撰組血風録(司馬遼太郎)
「燃えよ剣」が大河物なら、こちらは新撰組を舞台にした短編集。「燃えよ~」で痺れた歳サンが、隊士の目から見ると怖い怖い。
新選組血風録

●峠(司馬遼太郎)
峠 (上巻)

●花神(司馬遼太郎)
優れた軍事的才能で官軍を率い戊辰戦争を仕上げた「実務家」、蘭学者大村益次郎(村田蔵六)の生涯を描いた作品。とにかくオタク的仕事家、学者、と言う印象で、革命家の匂いは全くしないのに革命には確かに必要、と言う役どころが面白かった。
花神〈上〉

★明治 ―維新~西南戦争期― 1868~

●翔ぶが如く(司馬遼太郎)
明治初年から征韓論、西南戦争までを舞台に「薩摩武士」と言うものを描き、それによって西郷隆盛と言う人物像を浮かび上がらせようとした作品。竜馬や土方のようなわかりやすい直接的な「西郷キャラ」描写はない。それ故、エンターテイメントとしては若干難解。革命を成し遂げたはずの武士自身が革命後の世界に馴染めずに次々反乱を起こして滅びていくのが印象的。そしてその受け皿になった西郷。西郷の死の同年、盟友であり最期の敵であった大久保利通も紀尾井坂で暗殺される。「両氏は耦死(刺しちがえる事)された」との文章に、に泣いた。
翔ぶが如く〈1〉

●るろうに剣心(和月伸宏)
体力ゲージが見えてくるような典型的なジャンプバトル漫画だが、赤報隊、廃仏毀釈や紀尾井坂に触れてきたりするあたり、歴史もの的にも侮れない。主人公の緋村剣心こと人斬り抜刀斎のモデルは、佐久間象山を斬った河上彦斎だと聞いたが本当だろうか。斉藤一や大久保、山県有朋ばかりか、日本の警察機構を作った川路利良あたりまで出て来るわけだから、ほんと侮れない。
るろうに剣心―明治剣客浪漫譚 (01)

●ヤングマン(六田登)
明治日本を舞台にした妖術バトル?もの。日本に現れると言う、時代を変える「魔物」の正体が、「飛行機」だと言うのが渋い。(日本人・二宮忠八が、明治24年、ライト兄弟より12年も先にプロペラ飛行機を作っていたことを指す。)わりと好きな作品だったのだが、妖術で首を繋がれ復活した西郷隆盛が、主人公の付き人のようになっているのが少々興ざめだった。そんな小さい人物じゃなかろう…
ヤングマン 1 (1)

★明治 ―日清・日露戦争期― 1878頃~

●王道の狗(安彦良和)
秩父事件、アイヌ、金玉均、足尾銅山鉱毒事件…渋いチョイスだ。王道と覇道の対比、陸奥宗光による日清戦争への路線転換を覇道と捉え「過ちのはじめ」と言う視点で描かれているが、全共闘世代は言う事が「ダメだダメだ おろかだおろかだ」ばかりで、「じゃあ歴史上どういう時代が良いのか」と言う前向きなもの、積極的なものを示す事はできないのだろうかとはちょっと思ってしまう。でも超美麗な絵で顕される当時の風俗、空気や、あまり詳しくない時代状況への興味などで楽しく読めた。ラスト、孫文などが出てきて主人公が活動家支援のハーロック的な位置付けになっているのは感涙もの。
王道の狗 (1)

●坂の上の雲(司馬遼太郎)
日清・日露戦争が舞台。ロシアコサック部隊を破った日本騎兵の父・秋山好古、日本海海戦勝利の立役者・海軍参謀秋山真之、俳人・正岡子規の三人が主人公と銘打たれるが、実際はこの三人は導入部でしかなく、時勢風雲急を告げ話が盛り上がってくる頃には子規は死んでいるし、好古・真之は日本を織り成すタペストリーの一部と言う印象。にもかかわらず、この話は抜群に面白い。幕末の黒船来航から始まった欧米列強の侵略の危機を、明治維新を成し遂げ、国を近代国家に作り直し、曲がりなりにも大国ロシアを追い返す所まで来たのがどうにも感動するからだろう。幕末の志士から引き続きのキャストとして、伊藤博文、山県有朋、大山巌など。陸軍から乃木希典、児玉源太郎。海軍から東郷平八郎。欧州諜報、明石元二郎。ロシア側、皇帝ニコライ二世、首相ウィッテ、旅順要塞司令官ステッセル、満州軍総司令官クロパトキン、バルチック艦隊司令官ロジェストヴェンスキー。
坂の上の雲〈1〉

●二百三高地(東映)
乃木と児玉、それと元教師の小隊長を主人公に、日露戦争最大の激戦、旅順要塞攻略を描く。べトン(コンクリート)の要塞と機関銃の前に、壁にぶつけられる卵の如く無意味に死んでいく兵士と、仲代達矢演じる乃木、丹波哲郎演じる児玉に涙が止まらない。この頃の俳優さんは凄いですね。エンターテイメント的には、旅順要塞は風雲たけし城の面白さがあった。戦争の酷さ・恐ろしさと、時代の苦難を乗り越えた日本の祖先たちの凄さと、両方とも描かれているのである意味バランスの取れた映画。児玉かっこいい! 公開当時戦争賛美映画と叩かれたりもしたらしいが、そう見える人間の方が盲目的な軍事アレルギー教育に洗脳されて思考停止しすぎてると思った。だってこの映画、さだまさしの歌に合わせてしつこいほど戦争の悲惨さもちゃんと訴えてるじゃん。現場の悲哀と、指導者の苦渋どちらも泣けるほど描かれている点でもこの映画は視野が広い。児玉が第三軍司令部に乗り込み指揮権を手に入れるシーンと、最後の乃木の明治天皇への謁見シーンは圧巻。
二百三高地

●日本海大海戦(東宝)
T字戦法や東郷ターンが見たかったのだが、このくらいの古さの映画だと自分には演出が若干淡々としすぎで辛かった。明石元二郎のヨーロッパでのスパイ活動がちょっと漫画チックだけどなかなかかっこよい。この頃の日本はちゃんとこういう情報戦の観点もあったんだな…
日本海大海戦

★大正 1912~

●はいからさんが通る(大和和紀)
昔見ていたアニメの刷り込みで「大正」と言うと真っ先にこれが思い浮かぶ。大正時代のチャーミングレディ~。原作では結構当時の風俗に触れていた。婚約者が行ったのは日露戦争だと勝手に思っていたが、読み返してみたらちゃんと「ロシア革命に干渉するための出兵」となっていた。案外しっかりしてる。
はいからさんが通る (1)

★昭和 ―太平洋(大東亜)戦争期― 1926~

●アドルフに告ぐ(手塚治虫)

●エトロフ発緊急電(佐々木譲)

●ケースハード(松本零士)

●ジパング(かわぐちかいじ)

●零戦燃ゆ(東宝)

●ビルマの竪琴(東宝)

●男たちのYAMATO(角川)

●ローレライ(東宝)

●終戦のローレライ(福井晴敏)

★昭和 ―戦後― 1945~

●ヤミの乱破(細野不二彦)連載中!

★昭和 ―安保闘争~全共闘~東西冷戦時代― 1960~

●ICHIGO~二都物語(六田登)
雑誌掲載時の煽りに、「君の知らない昭和史」とあった。(戦後史だったかな)戦後の荒野で、土建屋の社長の息子として生まれた梅川一期。父親達の手で着々と復興してゆく日本とは裏腹に、一期は殺人者として育っていく。ヤクザ、銭湯、山本リンダの歌、大阪万博、円谷幸吉の遺書、三島由紀夫割腹自殺…など、非常に「時代の匂い」を感じさせる作りだった。
ICHIGO二都物語 [少年向け:コミックセット]

●ヤング島耕作(弘兼憲史)連載中!
平成の世から「あの時代を振り返る」わけだから、この時代に生まれるか生まれないかである自分にとって、まさに歴史物。団塊の世代(=父親の世代)の青春の時代を疑似体験。島耕作はノンポリらしい。
ヤング島耕作 (1)

●レッド Red 1969~1972(山本直樹)連載中!
連合赤軍、よど号ハイジャック事件、浅間山荘事件。オルグ、自己批判、総括。恐らく山岳ベースでの凄惨なリンチ殺害が山場になるであろう。死亡する順番と思われる、キャラの頭についている①、②…が不気味。反面、フランス革命だって幕末だって現場の雰囲気はそう変わらない気もする。知ってるようで良く知らない全共闘時代。非常に期待している。今ひそかに一番楽しみにしている漫画。実名だと問題があるのか、人物や団体名が全て変えてあるのが残念。赤城=永田洋子くらいしか覚えれん。

●課長島耕作(弘兼憲史)
これは歴史物ではないが、バブリ~な時代を疑似体験できるので。
課長島耕作 (1)  新装版

★平成 1989~

●沈黙の艦隊(かわぐちかいじ)
自衛隊と米軍が共同で秘密裏に作った原子力潜水艦シーバットが離脱、独立を宣言。戦闘的独立国家「やまと」を名乗る。連載当初はまだソ連があり、資本主義対共産主義の構図が辛うじて残っていた。が、程なくソ連崩壊、冷戦終結。次代の問題は核拡散、対テロ戦争の時代に向かう。現実の歴史ではないが、この作品にはその時代の空気が色濃く反映されていると思う。
沈黙の艦隊 1 (1)

●部長島耕作(弘兼憲史)
バブルが崩壊するも、結構上手くやる島耕作。弘兼先生は確かインタビューで「不況で苦しむサラリーマンに元気を与えたい」とおっしゃっていたと思う。
部長島耕作 (1)

●アクメツ(田畑由秋 余湖裕輝)
「小泉時代」と見事なほどシンクロ。小泉改革を振り返るのにもなかなかいいんじゃないかと思います。随所に盛り込まれる豆知識的な歴史的観点も、歴史オタ的にオススメですぜ。最初はテロ賛美の危ない漫画かと思っちゃいましたが、その思想的基盤に儒教における中華帝国易姓革命の「放伐」や、フレイザーの「金枝篇」にある王殺しのシステムに通じる所があってなかなか底が深いです。最後の村瀬首相の演説は素晴らしい。田畑先生はどちらも意識していなかった、とおっしゃっていましたが、「時に智者は同じ道を歩む」と言う事でしょうか。
アクメツ 1 (1)

●亡国のイージス(福井晴敏)

●取締役島耕作(弘兼憲史)
「部長~」とは逆に、団塊世代の定年退職、自殺などいきなり暗いシーンでビックリした。舞台が中国に移ったのは、なるほどなあ、と。21世紀は中国の時代と、随分前から言われてるし。
取締役島耕作 (vol.1)

●常務島耕作(弘兼憲史)
中国からインドも視野に入れだしたのが、なるほどなあ、と。21世紀はインドの時代と、随分前から言われてるし。
常務島耕作 (1)

●専務島耕作(弘兼憲史)連載中!
中国に加えて、アメリカも担当しだした。ここまで来ると、肩書きがどこまで行くのか楽しみになってきた。「社長島耕作」はガチとして、ファンの間では「経団連会長島耕作」「内閣総理大臣島耕作」「アメリカ合衆国大統領島耕作」「地球国家元首島耕作」「宇宙皇帝島耕作」等が予想されていると言う。(余談だが、中国南北朝時代の武将・梁の侯景は、「宇宙大将軍」を称した。こういう例もあるからして、今後の時代の推移如何によっては、あながち不可能とばかりは言いきれない。(嘘)) 個人的には「外務大臣島耕作」「国連事務総長島耕作」とかならある気がする。
専務島耕作 1 (1)

★未来 ―地球圏開発時代―

●プラネテス(幸村誠)

●アニメ プラネテス(谷口悟朗)

●ムーンロスト(星野之宣)

●機動戦士ガンダム(富野由悠季)
宇宙世紀は当然歴史だ。
機動戦士ガンダムDVD-BOX 1 特典フィギュア付(完全初回限定生産)

●機動戦士Zガンダム(富野由悠季)
機動戦士Zガンダム Part I ― メモリアルボックス版

●機動戦士ガンダムZZ(富野由悠季)
機動戦士ガンダム ZZ Part-1 ― メモリアルボックス版

●機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(富野由悠季)
機動戦士ガンダム 逆襲のシャア

●機動戦士ガンダムU.C.ユニコーン(福井晴敏)連載中!

●機動戦士ガンダム F91(富野由悠季)
機動戦士ガンダム F91

●機動戦士ガンダム クライマックスU.C. 紡がれし血統(森田崇 中村浩二郎)
自分の描いたものはピックアップw
機動戦士ガンダム クライマックスU.C. ―紡がれし血統― (1)

★未来 ―銀河進出時代―

●2001夜物語(星野之宣)

●銀河英雄伝説(田中芳樹)

★未来 ―悠久―

●∀ガンダム(富野由悠季)

●月に繭 地には果実(福井晴敏)

●火の鳥 未来編(手塚治虫)
人類滅びちゃった…
火の鳥 (2)

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NHKドラマ「坂の上の雲」

頼むからまともなもの作ってくださいよNHK。

「坂の上の雲」の不安

↑のような記事もあってやな感じ。まあゲンダイネットの言う事だから…という気もするが、今回は内容的にはまっとうな事言ってる気も。少なくとも中途半端な予算じゃ日本海海戦なんかしょぼい映像しか作れっこないんじゃなかろうか。(と言うか期待する方が間違ってる?) でも一応欠かさず受信料払ってる身だから、これくらいは言いたくなる。「坂の上の雲」には思い入れもあるし。

「男たちのYAMATO」や「硫黄島からの手紙」もいいけど、荒波を切り抜けて勝ち残った時代だってあったのだ。大和よりも三笠、46センチ砲より東郷ターンですよ(笑)。反省も大事だけど、「ダメだダメだ」だけじゃ何も生まないと思うの。うちらの世代はその刷り込み教育が酷すぎましたけどね。てなわけで、このあたりの時代も凄い映像で見てみたいもんです。うまくやったらラスト盛り上がると思うなあ。

とは言えドラマとして作りにくそうだなあと思うのは、この話、司馬遼太郎先生の原作はキャラ主体で作られていないこと。「竜馬がゆく」や「燃えよ剣」などはそのまま話なぞっても面白いと思うけど、「翔ぶが如く」などの後期の司馬先生の作品はかなり「歴史随筆」成分が濃厚で、ドラマとしてまんまやるのは難しいと思うんですよね。かと言っていわゆる「司馬成分」が抜けて全くのオリジナルになっちゃってもどうかと思うし…。

この作品も、どの紹介見ても「主人公は秋山好古、秋山真之、正岡子規の三人」と書いてあるが、正直言ってこの3人は、導入部に過ぎないと思う。時勢風雲急を告げて話が面白くなってくる頃には、子規は死んじゃってるし、好古・真之兄弟も日本と言うタペストリーを織り成す一要素になってしまっているしで、このキャラを通して話を味わう事は難しい。むしろ203高地での乃木・伊地知や児玉源太郎の方が、キャラのドラマが話そのものの行方に直結していて面白い。

結局主人公は「日本」、と言うしかない物語なので、人間ドラマとしては非常に作り方が難しいと思う。うまいことやってくれたらいいけど。

あと、映像と演出。こう、メリハリ付けたぐりんぐりんかっちょいいカメラワークに出来んものでしょうか。大河ドラマ見てるとノリがまったりしすぎて眠くなるんすよね…。

最近職場で見た「大奥」(主演・松下由樹さんの、春日局のやつ)が、かなりしまりのあるシナリオと演出でぐっと引き込まれて面白かった。民放だけど。このくらいの緊張感あるノリで「坂の上の雲」作ってくれたら、俺なんか大喜びなんですが。

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最近古代地中海世界の歴史にはまってます

historie きっかけは、岩明均先生の「ヒストリエ」。ギリシア・マケドニアの英雄アレクサンドロス大王の書記官・エウメネスが主人公の物語ですが、まったくそんな事知らなくても読めます。感動します!!泣くよ!! むしろ今のところ年表的な歴史的事実との関係は希薄で、3巻現在、まだアレクサンドロスすら影も形も出てきてません(笑)。 いや、もしかしたら一番最初に街を攻めていた若き武将がアレクサンドロスの可能性もあるかな? その直後長きに渡る回想シークエンスに突入したので、それはまだわかんない。後のディアドコイ(後継者戦争)での重要人物・アンティゴノスは出てきてますが・・・

shishiou アレクサンドロス題材だと、阿刀田高先生の小説・「獅子王アレクサンドロス」がかっこよくて燃えてお勧めです。アレクサンドロスと、その友人にして幕僚のヘパイスティオンセレウコスプトレマイオス老将パルメニオンらとの関係は、銀英伝ファンなら、ラインハルトキルヒアイスミッターマイヤーロイエンタール、或いはメルカッツなどの関係を思い出し、ふつふつと燃え立つものを覚えるでしょう。蒼天ファンなら曹操と魏武将たちを思い浮かべてください。また、「征服者」と言うより「冒険家」なんだな、と言うのもこれでイメージつきました。

arex-yas もう一つ、アレクサンドロスはあの、ガンダムの安彦良和先生も描いておられます。「アレクサンドロス~世界帝国への夢~」

ガンダム・ジ・オリジンが今めちゃくちゃ面白いのがきっかけで、最近安彦先生の漫画を探して読み漁ってるんですが、アレクサンドロスも描かれてたとは思わなかった。

解釈は安彦先生らしいと言うか、アレクサンドロスを少し情緒不安定な夢見る危うい少年として描いていて、蒼天曹操のような悪をも鉄の意思で遂行する英雄、巨人としての描き方じゃなかったですね。中盤ちょっと「そんなにネガティブに捉えなくても…」とも思ったんですけど、その辺、超人思想をしない「健全な良識人」感覚を持つ安彦先生らしいかなと。繊細で危うい感じが、それはそれでまた好きな感じなんで味わい深かったです。天才とは容量自体の大きい者ではなく、例えるなら傾けたコップの水、と言う説に僕も賛同する者ですが(そしてそういう人間にたまらなく魅力を感じる者ですが)、その感じが出てるのは良かった。(銀英伝のラインハルトもそうですもんね。) 前半ちょっと読みにくかったんですけど、中盤からどんどん入り込んで来れて、最後はかなり感動してしまった。 短いながら切なさもロマンもあるし、これ、僕はかなり好きですね。

それにしても、いやー安彦先生の絵でアレクサンドロスが読めたのは幸せだった。贅沢言えば、1冊で駆け足でやるんじゃなく、4冊くらいでゆっくりと読みたかった。それだけが残念。 でも変なはしょり方してるんじゃなく、ちゃんと一通りアレクサンドロスの人生が追えます。あ、ヒストリエの主人公エウメネスも、2・3コマだけ出てきてました(笑)。

ギリシアの最盛期を過ぎると、時代はローマ

rome 塩野七生先生の「ローマ人の物語」面白いですね~。文庫化を機に、ついに手を出しました。現在23巻。ユリウス・クラウディウス朝崩壊後の混乱がようやく収まり、五賢帝時代が始まるか、と言うところ。続刊が待たれます。

カエサルクレオパトラアウグストゥスティベリウス・そして同時代に現れる「キリスト」…の流れは、そう言えば昔からちょっと興味あって、高校時代とか大河漫画に描こうとしてプロットとか立ててた事あります。(こういう壮大な事ばっかやりたがるから連載取るのに苦労するんですが・・・(笑)) そう言えば昔読んだ、カエサル対ヴェルキンゲトリクスを題材にした「ローマに挑むケルトの若き狼・ガリア戦記」って小説のイラストも安彦先生が描いてたなあ・・・。

カエサルは多才の人で、政戦両略の天才の上に史上まれに見る革命家、その上文学史上の巨人でもあると言う、どうやら蒼天曹操にかなりタイプの似た英雄のようです。女ったらしで人妻好きのところも似てる(笑)。帝政(あるいは簒奪)への道を開きながら自らは帝位に付くことはなく、後継者が初代皇帝になるところも似ている。(もっともローマ皇帝と中華皇帝とは権威も権限もまったく違いますが。) 

また、カエサルの子カエサリオンを生むエジプト最後の女王クレオパトラ7世は、上記のアレクサンドロスの武将、プトレマイオスの子孫なんですよねー(プトレマイオス朝エジプト)。こういう因縁の絡み合い、たくさんの人間の、何世代・多民族に渡る壮大なドラマが歴史ものの醍醐味。

いつか蒼天航路みたいに、こういう魅力を出せた作品を描ければいいんだけど。

ちなみに、補足トリビア。「イスカンダル」とは、「アレクサンドロス」のアラビア語・ペルシア語名。

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アインシュタインからの手紙

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アインシュタイン

物理や科学に特に詳しくない人でも、その名前は一度は聞いたことがあるでしょう。僕もかなり思い入れのあった人物で、彼についていろんな本を読んだり、自分の漫画(「CLOCK CLOCK」)に重要な役柄で出しちゃったりしました。
↓こんな感じで。(テーマに係わるくらいの位置付けでした)

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アルバート・アインシュタイン。相対性理論を発表し、ニュートン以来の物理学の土台を根底から書き換えた、世界を変えた大科学者です。古典物理学最後の天才であり、現代物理学を生み出した最初の一人。アインシュタインの偉業によって、人類のこの世界への認識は根本的に変わりました。

エネルギーと質量は同じ物である(等価原理)」や、「光の速度は常に一定(光速度不変の法則)」、「空間は湾曲している」、「光速に近づくにつれて、また、大質量の物体に近づくにつれて、時間は遅れていく」、など、SFなどではお馴染みの宇宙の真の姿は、この天才が解き明かしたのです。wa-muワープ」や「ワームホール」、「ブラックホール」、「タイムトラベル」、「ビッグバン」「四次元」なども、アインシュタインの「特殊相対性理論」「一般相対性理論」などから生み出されたり、現実味を帯びてきた概念。「量子力学」と言う不思議な理論も、アインシュタインの研究の成果から生まれた理論体系です。(本人は「神はサイコロを振らない」と言って、生涯嫌っていましたが。) 今僕たちが使っているパソコンやなんかも、この量子力学がなければ存在しませんでした。現代の物理体系や科学技術全般は全て、「相対性理論」と「量子力学」を二本の柱に成り立っているのです。

pikapika また、相対性理論が生み出した不可思議な新しい世界観は、当時世界に熱狂的に受け入れられたらしく、ヨーロッパに「四次元ブーム」なる物を生み出しました。ピカソを始めとする「キュビスム」というあの奇妙な画風が生まれた土壌も、この「四次元」という新しい世界認識が根底にあったからこそと聞きます。

時は20世紀初頭。アインシュタインはこのように、科学界・物理学界のみならず、一般社会においても人気者になっていきました。


さて、アインシュタインの式で有名なのが、

E=mc²  

です。E=エネルギー、m=質量、c=光速度を表します。

これも、多くの人が1度は目にしたことがあるでしょう。でも、この式はいったい何を表しているんでしょうか。

「c」の光速度は、秒速30万キロ(300000㎞/s)です。これは、宇宙で一番速い速度です。この光の速度より速いスピードは、この世には存在しません。「c」とは、それほど大きな数値なわけです。で、この式では、その「c」をさらに2乗してるのです。

単純に、300000×300000だから、c²=90000000000 。

単位のことは置いといて、素人目に見ても、これがとてつもなく大きい数字と言うことがわかります。

つまりこの式は、どんな物体にでも、わずかな質量(m)に、とてつもないエネルギー(E)が含まれてることを表してる。

そして、この式から生み出されたのが、原爆であり、原子力発電所であるのです。

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アインシュタイン博士自身は、第2次大戦前からの筋金入りの平和運動家でした。根っからの自由人でもあり、自身が「学校」と言うものに馴染めなかった事もあって、軍隊的なものに生理的な嫌悪感を持っていたとすら語ってます。自分の研究が軍事利用されることに抵抗のないタイプの人間では決してありません。

が、ナチスの脅威が現実化し始めた1939年8月2日、レオ・シラードの要請を受けて、アインシュタインは、ルーズベルト大統領宛の原爆の開発をうながす手紙に署名してしまいます。シラードが手紙を持ってきて依頼してから、2週間悩んだすえの事だったといいます。アインシュタインのことを同志だと思っていた原理的平和主義者たちは、このアインシュタインの変節を非難しました。

アインシュタインの業績と魅力的なキャラクターを尊敬していた世界中の彼のファンたちも、同様だったのでしょう。今日(2005.6.7)のヤフーニュースのトップに、こんな記事が紹介されていました。暴力、戦争、戦争責任に関するアインシュタインの生身の声が感じられて、なかなか興味深いです。

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アインシュタイン(1879~1955)博士が平和観や戦争責任についてつづった6通の手紙の寄贈先を、東京都中野区在住、哲学者の故・篠原正瑛(せいえい)さんの家族が探している。博士は第二次大戦中、ルーズベルト米大統領(当時)に原爆開発を促す連名の書簡を送った。「あなたは平和主義者と言うが、なぜ開発を促したのか」と批判する篠原さんの指摘をきっかけに始まった文通の手紙で、家族は「今年は戦後60年の節目。平和を考える材料にしてほしい」と話している。

(中略)

 ◇アインシュタイン博士からの手紙(抜粋)
1953年2月22日
……私は絶対的な平和主義者だとは言っていません。私は常に、確信的な平和主義者です。つまり、確信的な平和主義者としてでも、私の考えでは暴力が必要になる条件があるのです。
その条件というのは、私に敵がいて、その敵の目的が私や私の家族を無条件に抹殺しようとしている場合です。……したがって、私の考えではナチス・ドイツに対して暴力を用いることは正当なことであり、そうする必要がありました。
1953年6月23日
……私は日本に対する原爆使用は常に有罪だと考えていますが、この致命的な決定を阻止するためには何もできなかった。日本人が朝鮮や中国で行ったすべての行為に対して「あなた(篠原さん)に責任がある」と言われるのと同様、(私は)ほとんど何もできなかったのです。……他人やその人の行為についてはまず、十分な情報を手に入れてから、自分の意見を述べるように努力すべきでしょう。あなたは、日本で私を批判的に説明しようとしている。……
1953年7月18日
あなたが前回のお手紙で予告されていた、素晴らしい日本の木彫りの人形が届きました。素晴らしい贈り物に心から感謝します。
1954年5月25日
……奥様からの感動的なお申し出をありがとうございます。しかし、私はどのみち要求の多い人間でありますし、あなたの国にも必要とされるふさわしい人たちは大勢いらっしゃるでしょうから、その友情をお受けすることはできません。
1954年7月7日
……原爆開発で唯一の私の慰めとなることは、今回のおぞましい効果が継続して認識され、国家を超えた安全保障の構築が早まっていることです。ただ、国粋主義的なばかげた動きは相変わらずあるようです。
(手紙はすべてドイツ語。藤生竹志訳す)

(毎日新聞) - 6月7日3時7分更新

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アインシュタインは、ドイツ生まれのユダヤ人でした。ナチスの台頭に嫌気がさし自身は草々に祖国に見切りをつけアメリカに渡ったのですが、残してきた親戚縁者が次々と強制収容所に送られるに及び、遂にあの決意に至った。手紙の端々から、その苦渋が伝わってくるようです。

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アインシュタインにとって日本への原爆投下は心の傷になったようです。彼は2次大戦後も平和運動家でありつづけ、また日本のことも愛してくれて来日したりもしました。しかし、この手紙を見てもわかる通り、「殺されても殺さない」、完全無抵抗主義者ではないと思います。(対して、「自分の恋人や娘がレイプされて惨殺されても自分は武器を取らない」と公言する完全非暴力主義者もいます。ここまで言い切ると、それはそれで天晴れと言う気もします。)

戦後60年、戦争を知らない僕らにもわかるほど、世界がいろいろきな臭くなってきました。そのせいか、以前アインシュタインの本を読んだ時よりも、この辺の彼の気持ちがより興味深く感じるようになりました。思わず大人気なく感情的な返事を送ってしまう稚気も含めて、やはりこの人は面白い。僕の漫画でも当時いろいろこの辺に絡めた展開を考えてたんですが、その時の気分をちょっと思い出したので、ここに記しておきます。

※しまった、追記。

アインシュタインって言うなら、戦後60周年なんて言うより
「奇跡の年」100周年って言うべきだった。
興味ある人は、「アインシュタイン 奇跡の年」でグーグル検索してみましょう。

ちなみに「奇跡の年」1905年は、モーリス=ルブラン作・アルセーヌ=ルパンシリーズの傑作「奇巌城」が発表された年でもあります。

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見に行ってきましたよキングダム・オブ・ヘブン。

先日書いたように、見に行ってきましたキングダム・オブ・ヘブン

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さて。

結論から言いますと、かなりの名作だったと思います。マイ・フェイバリット映画リストに名前を連ねるほど。僕自身は非常に堪能しました。

ただし、一緒に見に行った弟にはかなりきつかった様子。「十字軍」「中世ヨーロッパ」「イスラム」に関してある程度の予備知識がないと、状況を理解する(ついていく)のに必死で、映像や感情の流れ自体に十分に浸れず、ゆえに展開に引き込まれることも不十分。結果、長く退屈に感じたようです。(実際長いし。) 吹き替えだったらもうちょっと違ったかも、と言っておりました。それと、大体の流れを知っている僕には盛り上げ所も落とし所も想像がついたので前半の少々だるい部分も楽しめて見れたのですが、その辺知らないと、この話がどういう方向に行くのか見えず中盤で気持ちが離れちゃうのかもしれません。

つまりは、渋い!! 地味目!! 

楽しく気楽にスカッと見れる、燃えて泣ける大スペクタクル…と言う面白さとはちょっと違うので、人を選ぶのは確かなようです。僕は好きだけど、大ヒットはしないかな・・・。

かと言って、例えばマトリックスや富野作品、あるいは紀里谷キャシャーンのような、いわゆる「破綻してる」とか「裏設定を知って初めてわかる」とか言う類のものって訳でもないんですよね。非常に丁寧に順を追って作られていて、映画を理解するのに必要な情報は映画自体の中にちゃんと全て含まれています。ただ、予備知識がないと、ある場面の描写にその場で頭の理解がおっつかないので、どうしても「後追い理解」になってしまう。見てるうちに「ああ、そういう状況なのね」と言うのはわかるんですけど、それじゃあ見てて一緒に感情を乗せる事が出来ない。そういうもったいなさがある作りではありました。ダサいかもしれないけど、キルビルのように地図上にギュイーンと十字軍の経路を矢印で引っ張る映像でも入れたらよかったのに。図解でイメージできるとだいぶ違うんですよやっぱ。あと、兜に顔が隠れてるせいか、登場人物の見分けがつきにくいのも辛かったようです。

ただ、渋い、地味だと言っても映像はすばらしかったと思う。特に、最後の攻城戦は迫力満点。 

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それと主人公役のオーランド・ブルームの全編通じた憂い顔もまあ魅力的と言えるので、映像重視の方、それとオーリーファンの方も興味を持続して最後まで楽しめるかもしれません。


で、以上を踏まえて、僕個人としての感想を。

戦争と平和についてや主人公の苦悩について…などのまっとうなレビュー、もしくは「オーリー最高!!」みたいなのは既に多くの方のブログで書かれてるようなので、ここは一つ歴史オタ的アプローチで書いてみたい思います。(だって優れた共感できる感想がいっぱいあって、同じの書いてもつまんないんだもん) 思いっきりネタバレを含むので、未見の人で楽しみにしてる人はこれ以上は読まない方がいいです。

さて、まず…

エルサレム王とサラディンかっこえええええ!!!!

先日の記事にも書きましたが、イスラーム側の指導者のサラディン、正式(?)には「サラーフ・アッディーン」ですが、十字軍側の騎士たちにも尊敬されるほどの、高潔で器のでかい英雄です。十字軍(ヨーロッパ側)の侵攻に対して、バラバラだったイスラムを束ねてそれを跳ね返した指導者。カリスマもある。先日書いた、「サラディンはエルサレム占領の時、住民を一人も殺さずにキリスト教国に送り返してます」の部分も、映画の中できっちり描かれていました。(と言うか、そこがこの映画のクライマックスだった(笑))

その時の、オーランド・ブルーム演じる主人公とのやり取りがまたかっこいい。

「信じられないのか? 私はサラディンだ」

これだけのセリフが敵方にも説得力を持っちゃう英雄なんですよ、サラディンって。演じた俳優さんもなかなか存在感のある人で、この英雄に位負けしてなかった、と思います。

さて、この映画に出てくるもう一人の英雄、エルサレム王

恥ずかしながら、この人の事はあまり知りませんでした。が、この映画を見る限り、イスラームとエルサレム王国(キリスト教国側)の衝突を最後まで避けようとした、若いながらも責任感に満ちた、魅力的な王だったようですね。禮病に冒されて肌はボロボロになりながらも、マスクをつけて責務を全うする姿には心打たれます。えっと、乱暴な言い方しちゃえば、キャラ的にも物凄く立ってていい。

で、ここでまず普通の人が混乱すること。

あれ? 十字軍ってヨーロッパ(ローマ法王&ヨーロッパ諸国)側がエルサレム(キリスト教の聖地)奪還のためにイスラムに攻め込んだ軍じゃなかったっけ?  なんでエルサレム王国がキリスト教国側なの?

これを理解するためには、まず「十字軍」ってのが何百年もの間に何度も何度も起こされた軍事行動だ、と言うのを知っておく必要があります。

第1回十字軍(1096-1099) 
 十字軍、イスラム支配下のエルサレムを占領。このとき老若男女7万人のムスリムを虐殺。この十字軍によって、エルサレム王国が建国

第2回十字軍(1147~1148)
 しばらくの間、聖地においてキリスト教徒とイスラム教徒が共存する状態が続いていたが、イスラム教徒が盛り返したことでヨーロッパで危機感が募り結成

第3回十字軍(1189~1192)
 十字軍、ハッティンでサラディンに敗北。エルサレム陥落。(ここがこの映画!!)

ドイツ帝フリードリヒ1世(赤髭王)、フランス王フィリップ2世(尊厳王)、イングランド王リチャード1世(獅子心王)に指揮され、エルサレム奪還のための十字軍が起こされる。各国の王自ら遠征に赴いたことから、帝王十字軍と呼ばれる。

以下、第4回、第5回、第6回、第7回…と続きます。

つまりはこの映画は第3回十字軍の前半部分、既に十字軍(ヨーロッパ)側がエルサレムを領有していた状態から始まるのです。(この状態だってことが日本人にとって常識ではないので、見ながらの後追い理解になり、辛い)

さてこの映画、父をついで貴族となり、やがてこの一連の流れのキーパーソンとなる主人公バリアン・オブ・イベリンと、彼を信頼し最後までイスラムとの衝突を避けようとするエルサレム王、そしてムスリムを挑発し戦端を開きたがるギー・ド・ジュニアン&ルノー・ド・シャティヨン、エルサレム王の妹シビラ、そして英雄サラディン、と、それぞれの生き様と運命が絡み合い大きな歴史のうねりが織り成されていく群像ドラマ、という歴史物の醍醐味が存分に堪能できます。それぞれの人物が身近に感じるので、まるで現場の生き証人になったような錯覚を覚える。「全ての人間が共存する神の国(キングダム・オブ・ヘブン)」を夢見て十字軍に全てをささげてきたが、その人生に疑問を抱き始めたヨーロッパ側の騎士の苦悩もいい味出してます。作りは重厚できちんとしていて、ある程度予備知識のある人や興味のある人にはお勧めできるかと思います。特に、今に至る中東紛争の原点とも言えるので、そういう目で見たら興味深いですよ。(このご時世、イラク問題に全く興味ない人はいないでしょ?) 玉石混合でスペクタクル映画が目白押しの中で、「なぜ今この映画なのか」と言う意味は間違いなく「ある」と感じました。

ラストシーン、講和を果たして住民を引き連れて故郷に戻った主人公の側を、聖地奪還のための新たな十字軍が通ります。紛争は続く、と言うわけです。今に至るまで。平和への祈り、とか、愚かな人間の争い、とかは言う気はありませんが、素直に「業が深いなあ、人間。」と思わされる場面です。(どうでもいいですが、やっぱりラストシーンはリチャード獅子心王なんですね。ロビン・フッドに続いてまたも!! ヨーロッパではやはり人気のある英雄なんだなあ…)

最後にもう一つ。歴史オタからのトリビア。

陳瞬臣さんと言う、中国の歴史物専門の小説家さんが、「チンギス・ハーンの一族」と言う本を書いています。その冒頭シーンは、モンゴルの草原でもなく中国でもない、1187年のエルサレムから始まります。エルサレム陥落直後。そう、この映画のラストシーンです。陥落したエルサレムの高台に立ったサラディンが、東方の草原に新たに現れた若き英雄に思いを馳せる所から始まるのです。

若き英雄とは、モンゴル部ボルジギン氏族のテムジン。後のチンギス・ハーン

そうです。サラディンとチンギス・ハーンは同じ時代を生きた人間なんです

周知のとおり、チンギス・ハーンとその後継者率いるモンゴルは、この後草原を征服し、東は当時の中華国家・金・宋を滅ぼし、日本(当時は鎌倉幕府)まで攻め込み、西は中央アジア、イスラム圏は愚か、東ヨーロッパ(今のポーランドやハンガリーあたり)まで攻め込む。史上空前の大帝国です。変な話、このアジアからの脅威のせいで、一時イスラムもヨーロッパも十字軍どころではなくなった言えるそうで。

このモンゴルの軍隊には東で征服した金や宋の中華武将やイスラム武将もいたそうで、この軍隊が大遠征の末、例えば「ワールシュタットの戦い」等ではドイツ騎士修道会やポーランド王国部隊と戦ったりもしたらしい。

蒼天航路や三国無双に出てくるような中華武将とキングダム・オブ・ヘブンに出てくるようなヨーロッパ騎士団の対決。実際にあったはずのそんな場面を描いた映画も、いつか見てみたいですね。

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